DATA MARKETING
データマーケティング

インサイト活用事例 | メディアとメーカーが持っていた課題とは?

インサイト活用事例 | メディアとメーカーが持っていた課題とは?

要約:お客さまの行動における“なぜ?”を解明し、製品・サービス、そして施策につなげる。

メディア企業の事例:目標の設定、アンケートの実施、施策の活用、PDCAサイクル

目標の設定: 新規顧客の獲得と既存顧客の維持という二つの目標を設定。

アンケートの実施:新規顧客の増加を目指す場合、サービスや製品を利用し始めたきっかけをアンケートで聞く。

施策の意思決定への活用:顧客の声をもとに施策を策定し、新規顧客が増えたかを定量的なデータで確認。数百万円するイベントへの意思決定にも応用。

PDCAサイクル: 効果を測定し、ターゲット層が増えているかを定量データで見ていく。

メーカーの事例:課題の設定、アンケートの実施、データ分析、データ基盤の構築

課題の設定: 新規顧客の増加や製品の長期使用などの課題を設定。

アンケートの実施: 製品を使い始めた理由や利用を続ける理由、利用をやめた理由などをアンケートで調査。

データ分析: 定性および定量的なデータを見て、お客さまに関する、あらゆる「なぜ」の部分を解明する。

データ基盤の構築: データ基盤を作り、LTVなどを計測し、根拠を探る。

定性データと定量データで、意思決定の精度とスピードを上げる

インサイトを活用して製品やサービスの改善を目指す企業が増えていますが、具体的な活用法に悩むことも多いのではないでしょうか。

実はインサイトを活用したアプローチには定性データと定量データを組み合わせることで、投資における意思決定の精度とスピードを向上できます。

たとえば、数百万円の予算がかかる、絶対に失敗できない施策などの意思決定に活用が可能。

この記事では、実際にインサイトを活用したメディアとメーカーによる、サービスや製品を改善した具体的な事例を紹介します。

スピーカー

横関 彩

2009年にWOWOWコミュニケーションズに新卒入社。 WOWOWカスタマーセンターの業務コーディネートやWOWOWの営業/プロモーション/広告・宣伝などを経て、アナログとデジタルのコミュニケーション設計やCDPの構築・導入・データ分析等を担当。現在はWOWOWで得たノウハウの外販展開を推進中。ポッドキャスト

インタビュアー

原澤 陽

合同会社HARAFUJI Co-Founder COO | 大学在学中の19歳より株式会社ギャプライズにてBtoCデジタルマーケティング、BtoBマーケティング、法人営業に従事。その後、チーターデジタル株式会社にて法人営業を経て、 現在は合同会社HARAFUJIの共同創業者として独立。BtoBマーケティングを中心とした戦略および戦術支援事業に従事している。登壇実績

インサイト活用事例 | メディア企業の事例

━━━前回「インサイトをBIツールにまとめて報告する方法。」ついて伺いました。今回は“インサイト”を製品やサービスの改善にどのように活かしているのかについて、教えてください。

前回お話しした担当者がBIツールを用いて定常的にデータを見て、製品やサービスの改善に役立つヒントを探す手法は、データマーケティングが根付いている企業での活用法だと思います。

一般的には、パワーポイントのような報告書で挙げた内容を改善に活かすケースが多いです。

その場合、お客さまの声と定量データを組み合わせて「なぜ、そのようなデータになったのか?」の理由を考えたり「この数字を向上させるために、お客さまの意見をどのように活用すべきか?」と分析しするなど改善策を考えます。

それらを基にして、施策やサービスの改善に役立てることが一般的です。

━━━報告する中で、クライアントに喜んでいただいたり、よく驚かれたりするページはありますか?

お客さまが「御社の強みはここにある」と指摘したキーワードを基に、強みの関連性や、それらの中核をなす要素を相関図で示した報告書を何度か作成しました。

その際、これまで未知の単語や予想外の観点、いわゆるインサイトを見つけ出し、クライアントからは喜びの声を頂けたことがあります。

定性調査を進めていくと、お客さまが無意識に同じキーワードを提供することがあり、これらのキーワードは「企業が気づいていなかった企業の強み」を表していることが多いです。

多くのお客さまが同様のキーワードで答える場合、そのキーワードは企業の核となる強みである可能性が高いです。

お客さまの声は、サービスの受け手が何を感じ、どのような心の動きを経験するかが明らかになります。この感情の動き、例えば癒しや楽しみなどが、実は企業の提供するサービスの強みとなるケースもあります。

用元:“お客さまの声”を集めた後、インサイトを報告する。

━━━定量データ定性データを掛け合わせ、そこからヒントを得て改善に繋げるのはかなりの高等技術だと思います。実際、データを活用してサービスやプロダクト、施策の改善に活かしたり変更した具体的な事例は何かありますか?

例えば、メディア系の企業をサポートする場合、新規顧客の獲得か既存顧客の維持かという二つの目標があります。

新規顧客を増やしたい場合は、どのようなきっかけでそのサービスや製品を利用し始めたかをアンケートで聞きます。

そうすると、実際のお客さまの声で「こんなきっかけで使い始めました」という意見が出てくるので、それを施策のポイントとして活用します。

そして、その施策によって新規顧客が実際に増えたかどうかを定量的なデータで確認し、PDCAサイクルを回して、狙ったターゲット層が増えているかを定量的なデータで見ていくというアプローチをとっています。

「何がきっかけで知りましたか?」「なぜ、製品・サービスを使ってくれますか?」などのシンプルで重要な要素にも関わらず、これらの答えを知っている、さらには活かせている企業は多くないのではないでしょうか。

前にお話ししたように、「きっかけ」や「理由」については、アンケートで自由回答してもらうために選択肢を用意しません。

企業側が予想した選択肢を用意してしまうと、回答者はその選択肢にチェックを入れるだけで終わってしまう可能性があります。

そのため、回答者には自由に回答してもらうようにしています。

━━━ 一方で、紙とデジタル、それぞれのアンケートの実施方法における共通点はありますか?

フリーアンサーを必ず入れます。

フリーアンサーにこそ、製品やサービスに対してどのような熱量や思いがあるかが現れます。

デジタルのアンケートで、プルダウンやチェックボックス式による回答方法は、回答者もアンケート収集側も労力がかからないメリットはあります。

しかし、お客さまからの回答をこちらで選択肢を予想した上で用意しているものになるため、回答結果が「調査の目的を達成できる内容」とならないケースが多い印象です。

要は、自ずと誘導尋問のような形になってします。

そうではなく、重要なのは「調査側が知らなかった部分、つまりは本音を引き出すこと」ではないでしょうか。

そのため、デジタルでも紙でもフリーアンサーを取り入れ、そこからインサイトの抽出を図っています。

引用元:なぜ、“お客さまの声”は重要なのか?

━━━確かに、そうすれば企業側からすると驚きの結果が得られる場合もありますね。

おっしゃる通りです。

例えば、「サービスを知ったきっかけ」のアンケートを具体的に書いてもらうと「X(旧Twitter)上でファン同士がコミュニケーションを取っているのを見て面白かったから」といった、きっかけの詳細が得られます。

お客さまの声を深掘りすると、Xの戦略の一つになったり、Xが重要だったことに気付けたりします。

元々は意図的にファン同士の交流を作ろうと思ってサービスを提供していたわけではありませんでした。自然発生的に生まれた交流があったため、そのような視点でサービスを見てもらえると、ファン同士のコミュニケーションがファンを維持する基盤になる場合は、別の形でファン同士のオフラインイベントを行ってみるなど、新たな施策に繋げていけます。

オフラインイベントとなると、数百万円の投資となりますが、インサイトがあるおかげで自信をもって意思決定できます。

━━━面白いですね。自然発生なので故意には作れないけれども、自然発生が起こりうる可能性のある仕掛けを置いてあげると、結果、自然発生が起こり、元々の目的である新規の獲得に繋がる。またそれを定量データで計測ができれば、数百万円以上するイベントの意思決定にも利用できる。やはりフリーアンサーは重要ですね。

大変ですが、意外と活用できるものです。

参考記事「インサイトを見つける方法とデータマーケティング施策への活かし方」

インサイト活用事例 | メーカー企業の事例

━━━他の事例もありますか?

メディア企業の場合は、施策を実際に実行するところまで進めていますが、メーカーでは、例えば「新規顧客を増やしたい」や「より長くその製品を使ってもらいたい」といった課題に対して、インサイトを活用しています。

定性的なデータかつ、定量的な数値も見ることで「自分たちの弱い部分はどこなのか?」「なぜ使い始めてくれたのか?」「なぜ利用し続けてくれているのか?」「なぜ辞めてしまったのか?」といった点について、データの根拠を知るためにアンケートを使って「なぜ」の部分を解明していくということを行っています。

これにより、意思決定スピードおよび精度を向上させています。

━━━お客さまの「なぜ」を分析する際は、まずはデータ基盤を作り、例えばLTVなどを計測した後で“ここだ“というのをあたりを付けてデータ分析をしていくのでしょうか?それとも、いきなり「なぜ」の根拠となるデータを探りに行くかでいうと、どちらでしょうか?

両方を並行して行なっています。

この事例では、元々は定性データ分析のご要望が頂きました。しかし、お話を伺っていくと、定量データの面、例えばデータ同士の計算式の構築、重要因子の特定と管理など、定量面がなければ定性データが活かせない状況が見えてきました。

そこから「定性データの分析と定量データの分析の両方を掛け合わせることが重要である」と提案させていただき、ご理解いただいた上で、元々頂いていた定性データの分析と、CDPを活用した定量データの整備・分析を同時に始めました。

元々はCDPなどを導入する予定はなかったのですが、定性と定量、両方のデータをきちんと持っていないといけないという理解が進んだことでCDPの導入に至りました。

今はCDPを使って定量データ分析をし、定性データの部分は引き続きアンケートやインタビュー調査を行うといった、定量と定性のバランスを重視したマーケティングの展開をサポートしています。

━━━最後に、サービス・製品の改善にデータやインサイトを連携させる際に、注意されてることやリスクヘッジされてること、意識されてることはありますか?

定量データも定性データも、どちらか片方だけで全てのお客様を理解することはできないということを意識し、偏りがないようにしています。

定量データは企業のサービスの仕組みによりますが、全てのデータをデジタルで取れている企業もあればそうでない業態も多くあります。

WOWOWコミュニケーションズは、全てがデジタル化されていない業態の方とのお付き合いが多いので、デジタルでDX化が進んでいる場合、行動ログの形で残っているデータだけを見ていると、アナログで接しているお客様のことを見落としてしまいます。

逆に、アナログのお客様も多く含まれているアンケートのデータだけを見ていると、今度は定量データの部分を見落としてしまうことがあります。

データ好きな人は定量を見がちですし、一方でアナログ好きと言いますか、常に人の温度を感じたい人は、定性に向いてしまいがちです。あくまでも、バランスが重要ではないでしょうか。


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この記事を書いた人

矢尻 真麻

2012年にWOWOWコミュニケーションズ入社。 入社後はWOWOWのSNS/WEBサイト/MAなどのディレクション業務を経験。現在はWOWOWでのノウハウを活かし、新規営業獲得に向けて企画推進中。

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