【SVはコンタクトセンターの要 #4】当日、突然のアクシデント…どう乗り越える?
目次
要約
突然のアクシデントに対応する4つのステップ
稼働が崩れたときは、状況把握、根本要因の探索、選択・判断・行動、検証の4つのステップで対応します。この考え方はSV研修で学ぶ仮説思考やロジカルシンキングがもとになっており、SV全員が共通の基盤を持っています。
ステップ4「検証」は1〜2時間を目安に判断する
打ち手が効果を出しているかどうかは、影響したお客様の数と数値の変化を見て判断します。判断に必要なデータ量を確保するため、1〜2時間ほど様子を見るのが目安です。
アクシデントに強いSVになるための2つの備え
「稼働は崩れるもの」という前提に立ったうえで、対応フローを作って定期的に訓練します。あわせて、ベテランSVの思考プロセスを可視化し、センターの財産として残すことが重要です。
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概要
クレームの増加、システム障害などで、コンタクトセンターの稼働が突然崩れることは珍しくありません。
その場の判断がSV個人の経験や勘に任されていて、対応の質にばらつきがあることに悩む方も多いのではないでしょうか。
本稿では、WOWCOMのスーパーバイザーが実践している、稼働崩れに対応する4つのステップと、アクシデントに強いセンターをつくるための日頃の備えを解説します。
状況把握から検証までの判断の流れを押さえることで、突然のアクシデントにも落ち着いて対応できる体制づくりのヒントとなれば幸いです。
【“SVはコンタクトセンターの要”シリーズとは?】
コンタクトセンターの成果は、現場を預かるSVの動き方で決まります。ただし、SVが力を発揮できるかどうかは、その上に立つ運営側の設計次第です。
本シリーズでは、業界経験25年・コンタクトセンターのプロフェッショナルである関口さんに、「明日のコンタクトセンター運営のヒントになること」そして「SVが輝く組織をどうつくるか」について、9話にわたってお届けしていきます。
※本編は“WOWCOMポッドキャスト”をテキスト化した内容です。またサムネイル画像およびYouTube内の画像にはDALL·E 3を使用しています。
突然のアクシデントに対応する4つのステップ
━━━コンタクトセンターでは、やはりさまざまなアクシデントが起きます。病気の流行やクレーム、システム障害などへの急な対応で稼働が崩れたとき、WOWCOMのSVの皆さんは何を優先し、具体的にどのように対応されていますか?
いくつかのステップがありますので、4つの順番でお伝えします。
1つ目は状況の把握です。
本来は応答率80%を達成しなければならないのに、今は50%しかない。これを「しょうがない」で済ませるのではなく、このままでは目標の着地に届かないという状況を把握することが大前提です。
ステップ2は、状況を把握したうえで、稼働の崩れを引き起こしている根本的な要因を探ることです。
━━━数字が崩れた要因を探るということでしょうか?
そうですね。たとえば、インフルエンザの流行で、本来50人出勤するはずが30人しか来ていないのか。あるいは、人は50人来ているものの、特定の問い合わせが急増し、予測していた応答のキャパシティを超えているのか。
また、入電量は増えていなくても、クレームが増えて1件あたりの通話時間が長くなり、その結果、次のお客様の電話に出られず、待ち時間が長くなって電話を切られてしまい、応答率が下がっているのか。このように、崩れの根本原因を探ることが第2ステップです。
ステップ3は、根本原因が見えたら、今の状況でできることを判断し、行動することです。
できることはいくつもありますが、すべてを実施するのは難しいため、何をやるのか、何をやらないのかを選び、やると決めたことを実行します。
たとえば応答率が大きく下がっている場合、お客様に向けてできることとして「現在、電話が大変混み合っているため、担当者から折り返しご連絡します」というアナウンスに切り替える方法があります。システム障害であれば、ホームページに障害のお知らせを掲載するといった対応もあります。
こうしたお客様向けの対応に加えて、オペレーターの負荷を軽くするために、「ここまでは案内してよい」「これは案内しない」といった判断基準をはっきり伝え、対応に必要な材料を渡すことも、第3ステップの具体的な判断と行動にあたります。
━━━選択・判断・行動のところですね。では、いよいよステップ4について教えてください。
ステップ3で選択・判断・行動した内容を、営業時間中ずっと同じように続けるわけではありません。まず最初の2時間、決めたことを実施します。そして2時間後に状況を確認し、変化がなければ別の手を打たなければなりません。
まずは今できることを一定時間実施し、その後に状況を確認する。必要であれば、再び選択・判断・行動を繰り返します。
これが、WOWCOMのスーパーバイザーが実践していることをステップとして整理したものです。
━━━この4ステップは、SV教育の中で教えられているフレームワークなのでしょうか。
そうですね。以前お話ししたように、スーパーバイザーになるための研修や試験があります。その中で、仮説検証やロジカルシンキング、クリティカルシンキングといった考え方を座学で学びます。
SVは全員同じ研修を受けているため、歴代の先輩も新任のSVも共通の知識を持っています。基本的な考え方は共通しているという感覚です。
ステップ1「状況把握」はソフト面とハード面の両方から行う
━━━まずステップ1の状況把握について伺います。現場によって違いはあると思いますが、そもそもどのように状況を把握しているのでしょうか?
ソフト面とハード面の2つに分けて考えています。
ハード面では、先ほどお話ししたダッシュボードのような画面で「今お客様が何人待っているか」「何分待っているか」といった数値を確認します。
一方ソフト面では、日頃からお客様との応対をモニタリングし、実際に通話を聞いています。その中で「今日はいつもと違う問い合わせが増えているな」といった予兆に気づきます。
このように、ソフト面とハード面の両方から得た情報を組み合わせて「何かおかしい」と判断し、状況を把握しています。
常にソフト面とハード面の両方で状況を見ています。
ステップ2「要因探索」を支える予兆の察知と仕組み化
━━━ステップ2で気になったのが要因の探り方です。ケースバイケースだとは思いますが、応答率が下がるなど数字に異常が出たとき、合理的に「ここがボトルネックだ」と判断できるものなのか、それとも「なぜだろう」という仮説思考から探っていくのか、どちらなのでしょうか。
両方です。予兆を察知するための先行指標として、たとえば普段は毎日2〜3人程度しか欠勤しないのに今日は5人欠勤しているとなれば、「今日は応答率が下がるかもしれない」と考えます。
また、朝9時に電話回線を開けたとき、通常なら1時間でこれくらい鳴るという目安がある中で、実際にはいつもの倍の電話が鳴っていることもあります。
このように、平常時と少しでも違うことを予兆の材料として捉え、日々の運営に臨んでいます。
━━━予兆に気づくというのは感覚なのでしょうか。それとも仕組みとして確立されているのでしょうか。
感覚的な部分もあれば、仕組みとして行っている部分もあります。すべてのセンターで実施しているかは分かりませんが、よくあるのは、「今日の出勤予定は何人で、そのうち何人が欠勤したのか」「合計で何時間分の稼働が失われているのか」を朝礼で共有する仕組みです。
また、365日稼働しているセンターが多いため、前日に勤務していなかった人に向けて「昨日は何時頃から急に電話が増え、こういう問い合わせが多かった」という申し送りも仕組みとして行っています。
━━━定量化できるところは仕組み化されているのですね。一方で、定量化が難しく、SVの卓越した能力によって気づくような崩れの要因や事例はありますか。
得意・不得意によるアンテナの差はあるものの、極端に感度が低い人はあまりいません。たとえば、お客様が5分、10分待たされている状況に気づかないということは基本的にありません。
それは、ダッシュボードのような画面を常に監視しているからです。
━━━想定外のアクシデントが起きないよう、事前の体制づくりを重視しているということですね。ただ、先ほどの例のように、50人の出勤予定が急に30人になるようなこともあるのでしょうか。
極端な例ですが、インフルエンザや新型コロナウイルスの流行時には、通常では考えられない人数が急に欠勤することもあります。
これは今後どう対応していくかという話にもつながりますが、私たちは「稼働は崩れるもの」という前提に立っています。
ステップ3「選択・判断・行動」の意思決定プロセス
━━━必ずうまくいくことを前提にするのではなく、崩れることを前提に体制を組み、何か起きたときにステップ3につなげていくのですね。ケースバイケースであることは承知のうえで伺いますが、「やる・やらない」の意思決定はどのようにされているのでしょうか。
一番の要はスーパーバイザーなので、最終的にはスーパーバイザーが判断します。
ただし、その判断内容はセンター長に報告し、「それで進めましょう」という形で意思決定をしています。もし選択や判断が現状と少し合っていなければ、センター長から「今回はこちらのほうがいいのではないか」とアドバイスを受けて修正することも、もちろんあります。
━━━「やる・やらない」を判断する際、SVの頭の中ではさまざまな優先順位が動いていると思います。SV研修で仮説思考などの考え方を身につけているため、意思決定の精度がある程度高く、大きく外れないという理解で合っていますか。
そうですね。ただ、研修を受けたからといってすぐに実践できるわけではありません。同じ研修を受けてスーパーバイザーになった歴代の先輩たちが周りにいますので、一緒に業務をする中で、新任のスーパーバイザーも判断基準や行動を学んでいきます。
センターも成長し、新任SVも成長していく構造になっています。
ステップ4「検証」は1〜2時間を目安に判断する
━━━最後にステップ4について、具体例として「まず2時間やってみて、状況が変わっているかを見る」とおっしゃっていました。切り替えのタイミングや判断のコツについて、特徴的な考え方や仕組みはありますか?
例として2時間と言いましたが、場合によっては1時間でよいこともあります。コンタクトセンターによって1件あたりの通話時間が異なるため、1時間あたりの応答件数も変わってきます。
少し言い方はよくありませんが、たった1人のお客様にステップ3の打ち手を実施しただけでは、全体への影響はそれほど大きくありません。
そのため、オペレーターの人数と対応したお客様の数を踏まえ、打ち手がどれくらいの人数に影響したのかを見ます。その結果として数値に変化が出ているかどうかで、施策を続けるか続けないかを判断します。経験上、その判断にはおおよそ1〜2時間様子を見るのがよいと考えています。
アクシデントに強いSVになるための2つの備え
━━━アクシデントに強いSVになるために、日頃からどのような準備や考え方を持つとよいのでしょうか?
先ほどもお伝えしましたが、まずは「稼働は崩れるもの」という前提に立つことです。そのうえで、できるとよいことが2つあります。
1つ目は、稼働が崩れたときに何をするのかというフローです。おそらくフローはあると思いますが、なければきちんと作ることです。
そして作ったら、避難訓練のように定期的に確認することが大切です。SVやセンターではだいたい月に一度ミーティングがあると思いますので、その場でフローを点検し「もし今日稼働が崩れたらどう動くか」を訓練として実施したほうがよいと思います。
━━━実際に起こってからでは遅いということですね。もう1つは何でしょうか。
もう1つは、先ほどベテランSVと新任SVのお話をしましたが、稼働の崩れへの対応が得意なSVは必ずいます。彼らは多くの経験を積み重ねていますが、稼働の崩れに強い理由となっている思考プロセスが、意外と可視化されていないのです。
━━━「脳内の可視化」ができていないというのは、まさにあるあるですね。
なぜ可視化されていないのかというと、稼働の崩れに強いSVに聞くと、「自分が考えてやっていることなんて大したことではない」と言うのです。
「可視化するまでもない」「みんなもできている」と言うのですが、実際に可視化すると非常に価値があり、センターの財産になります。
ですから、こうした思考や判断をきちんと可視化し、センターの財産として残しておくことが、稼働の崩れに強いセンターづくりにつながりますし、同時に稼働の崩れに強いSVを育てることにもつながると考えています。
━━━ハウツーになってしまうかもしれませんが「こうすれば脳内を可視化できる」という方法はありますか。
たとえば、応答率が50%になった、お客様が50人待っている、システム障害が発生した、といった状況と、その状況に対してどのような選択をし、どのような判断をし、どのような行動を取ったのかを分けて考え、可視化します。
━━━まさに冒頭でおっしゃっていたステップごとに整理するということですね。「どうしたのですか」と一言でまとめるのではなく、どう状況を把握し、どう要因を特定し、どう選択・判断・行動し、どう検証したのかを最低限のステップに分けて整理する。冒頭の内容が、そのままナレッジを可視化・蓄積する際のステップの分け方にもなっているのですね。
そうですね。これができると、さらに選択肢も可視化できます。対応力の高いSVは多くの選択肢を持っているので、その中から何を選んだのかまで可視化できると、とてもよいと思います。
実際に選んだ対応だけでなく、ほかにどのような選択肢を持っていたのかも大切です。
本当にSVがセンターの要だということを、今回のお話を通じて皆さんにも知っていただけたらうれしいです。
まとめ:稼働の崩れに強いSVとコンタクトセンターをつくる
4ステップで対応する
状況把握、要因探索、選択・判断・行動、検証の順に進めることで、突然のアクシデントにも筋道を立てて対応できます。
ソフトとハードの両面で把握する
ダッシュボードの数値と通話モニタリングで得た予兆を組み合わせることで、異常にいち早く気づけます。
予兆を仕組みで捉える
欠勤数や入電量などの先行指標を朝礼や申し送りで共有し、平常時との違いを要因探索の材料にします。
判断はSVが担い、センター長と擦り合わせる
最終判断はSVが行い、センター長への報告と助言を通じて精度を高め、先輩から新任へ判断基準を受け継ぎます。
1〜2時間で効果を検証する
打ち手が影響したお客様の数と数値の変化を見て、施策を続けるかどうかを判断します。
フローの訓練と思考の可視化
崩れたときのフローを避難訓練のように定期点検し、ベテランSVの状況・選択・判断・行動をセンターの財産として残します。
まとめ
「稼働は崩れるもの」という前提に立ち、判断のプロセスを共有・可視化することが、アクシデントに強いSVとセンターを育てる土台になります。
コンタクトセンターの稼働が突然崩れたとき、SVはどう対応すべきか。状況把握から要因探索、選択・判断・行動、検証までの4ステップと、アクシデントに強いセンターをつくるためのフロー訓練や思考の可視化のポイントを、運営担当者・管理職向けに解説します。
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