【SVはコンタクトセンターの要 #2】「品質改善」で成果を出す一歩目は…“立ち止まる”!?
目次
要約
品質改善が「声かけ」で終わってしまう理由
品質改善の周知や声かけ自体が改善行動にすり替わり、いつの間にか「相手がやってくれない」という他責の状態に陥るケースが多く見られます。改善のゴールが定義されていないことも、形骸化を招く大きな要因です。
抽象的な周知を行動に変える「フィードバック」の型
WOWCOMでは、抽象的なスローガンに必ず具体例をセットにして伝えます。このフィードバックは会社の制度として型化されており、実技試験に合格しなければスーパーバイザーにはなれません。
手段が先行する品質改善に立ち止まる
「とりあえず研修を」「まず面談を」と手段から入るのは、最も避けたい進め方です。理想と現状のギャップを確認してから行動に移すことが、成果につながる第一歩となります。
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概要
「品質を改善しよう」と声をかけているのに、現場がなかなか変わらない…そんな悩みを抱えるコンタクトセンターの管理者・スーパーバイザーは少なくありません。
その要因の多くは現場の意識ではなく、周知と行動の間にある「具体性の欠如」にあります。
本稿では、品質改善が形骸化してしまう構造と、それを行動に変えるスーパーバイザーの実践的な仕組みについて解説します。
フィードバックの型、業務中のモニタリング、業務終了後の申し送りまで、成果が出るセンターの運営実態を具体的にお伝えします。 明日からの改善アクションを見直すヒントとして、ぜひお役立てください。
【“SVはコンタクトセンターの要”シリーズとは?】
コンタクトセンターの成果は、現場を預かるSVの動き方で決まります。ただし、SVが力を発揮できるかどうかは、その上に立つ運営側の設計次第です。
本シリーズでは、業界経験25年・コンタクトセンターのプロフェッショナルである関口さんに、「明日のコンタクトセンター運営のヒントになること」そして「SVが輝く組織をどうつくるか」について、9話にわたってお届けしていきます。
※本編は“WOWCOMポッドキャスト”をテキスト化した内容です。またサムネイル画像およびYouTube内の画像にはDALL·E 3を使用しています。
品質改善が「声かけ」で終わってしまう理由
━━━スーパーバイザーがコンタクトセンターの品質改善を進める際、具体的にどのような順番で進め、最終的に品質改善につなげているのでしょうか?
どのような順番で進めるかをお話しする前に、品質改善を進める際によくあるケースを先にお伝えさせてください。
品質改善に取り組もうとなった時、分かりやすい例として、スーパーバイザーが朝礼で周知をしたり、品質改善のメッセージやスローガンを作ってセンターにポスターを貼ったり、日頃から「品質改善をしていこう」と声をかけたりします。こうした行動自体は必要なことであり、決して悪いわけではありません。
ただ、よくあるのが、その「声かけ」で終わってしまうケースです。
━━━声をかけて「品質を良くしよう」と伝えたものの、そこからなかなか具体的なアクションに落ちていかないのが現状なのでしょうか。
そうなんです。
周知する側のスーパーバイザーからすると「声をかけて周知したのだから、きっと意識してやってくれるだろう」「言われたらやってくれるだろう」という期待を、日頃の信頼関係や自分自身の価値観・考え方をもとに、ある意味で無意識のうちに持っているんです。
その結果、いつの間にか「声をかけること」「周知すること」自体が改善行動にすり替わってしまいます。
━━━本来は、声をかけたその先に具体的なアクションがあるはずなのに、声をかけること自体が目的、つまり改善アクションになってしまっているということですね。
そうです。
この状態が続くと、次に何が起こるかというと「改善の声かけもしたし、周知もしたし、話もしているのに改善されない」「やってくれない」という認識になっていきます。
すると、いつの間にか「自分が改善する」という意識ではなく、「相手がやってくれない」という話になってしまい、自分事から手が離れてしまうんです。
━━━ケースバイケースではあるものの、「以前は言えばやってくれた」という感覚があるわけですね。
そうです。「以前は言ったらやってくれたのに、今回は言ってもやってくれない」という状態です。
いわゆる形骸化です。
形骸化が起きてしまうというのは、コンタクトセンターの品質改善においてよくあるケースです。
一方で、言われている側、つまり周知を受けるオペレーターの立場からすると、そもそも「お客さまに品質の悪い対応を提供しよう」と考えているオペレーターはいません。
━━━確かに、わざわざ品質を悪くしようという方はいないですよね。
そうなんです。誰も得をしないことはやらないんです。
つまり、一人ひとりのオペレーターは、自分の担当範囲の中でベストを尽くしているという認識を持っています。
自分なりに頑張っているし、やるべきことはきちんとやっていると思っているので、周知を受けても、なかなか自分事として捉えにくいんです。
━━━スーパーバイザーが「品質改善をしましょう」と伝えた時、受け手も「そうですよね」と同意はすると思います。それでも具体的なアクションにつながらないのは、同意してから実際に行動するまでの間で何が起きているのでしょうか?
結局、周知だけで終わってしまっているんです。
具体的に「どの品質を」「どう改善すれば品質向上につながるのか」という中身が示されないまま、周知や声かけだけで終わってしまう。これが非常によくあるケースです。
この点は、この後の話を進める前に、ぜひお伝えしておきたかったことですね。
品質のゴールを描くのは誰か?
━━━今回はあまり深掘りしませんが「そもそも、品質そのものを定義しないまま改善を進めている」ケースもあるのでしょうか?
ありますね。
品質改善と言っても、改善のゴールを決めていなければ、何をもって「改善できた」と判断するのか証明できませんからね。
よくあるのが、「生産性を向上しましょう!」と言うだけで終わってしまうケースですね。
━━━そもそも「品質とは何か」「何をもって品質改善が達成されたと言えるのか」という全体像を描くのは、スーパーバイザーなのでしょうか。それともセンター長、あるいは別の役割の方なのでしょうか。
センターによって異なりますが、WOWCOMは品質を強みとしていることもあり、その設計はスーパーバイザーがしっかり担うことが中心になります。
━━━つまりWOWCOMでは、スーパーバイザーが「品質とはこういうもの」「改善後の状態はこうあるべき」というゴールを定め、その実現を目指しているということですね。
そうです。
その内容については、センター長と常に合意形成を行い、コミュニケーションを取って、方向性が間違っていないかを確認しながら進めています。
抽象的な周知を行動に変える「フィードバック」の型
━━━「声かけだけで終わってしまう」というよくあるケースがある中で、WOWCOMでは声かけで終わらせないために、どのような取り組みをされているのでしょうか。
「声かけに気を付けようね」「生産性を向上させようね」という意識を、意識で終わらせずに行動へ落とし込む。そのために、抽象的な「改善しようね」というメッセージにプラスして、具体例をセットにして伝えます。
━━━現場の具体的なシーンでお聞きしたいのですが、例えば朝礼の場で、スーパーバイザーはオペレーターに対して品質改善の声かけとして何を伝えるのでしょうか。
例えば、生産性を向上することが品質改善だとしたら、まずスローガンとして「品質改善をしましょう」があります。
その上で、この品質改善における生産性向上とはどの部分の何を指しているのか、例えば通話が終わった後の後処理の時間について、現在のセンターの平均がこれくらいで、あなたの平均はこれくらいです、と示します。
そして「これをここまで上げてほしい」と伝え、それはなぜなのか、という理由まで、しっかりとお伝えする。それが、いわゆるフィードバックというものになりますね。
━━━今のフィードバックには型があるのでしょうか。それとも個人の経験からくるものなのでしょうか。
WOWCOMとしてフィードバックの型を持っています。スーパーバイザーの試験を受けた方々は、こういう実技もしっかりと合格をして、スーパーバイザーとして活躍しています。
━━━フィードバック研修を修了し、実践の場で活かせることが確認できなければ、そもそもスーパーバイザーの資格は得られないということですか。
そうですね。研修を受けて、フィードバックの実技試験に合格しないと、スーパーバイザーにはなれません。
━━━WOWCOMでは「スーパーバイザー=声かけで終わらせず、品質改善につながるアクションができる人」という位置付けになるわけですね。このフィードバックという仕組みは、どのような背景があって、いつ頃から導入されたのでしょうか。
WOWCOMは会社設立当初からコンタクトセンターを運営しており、その頃からスーパーバイザーという役割がありました。
そのため、恐らく会社の初期から、スーパーバイザーになるための試験が設けられていたのだと思います。
━━━現在はフィードバック研修以外にもさまざまな試験を受けてスーパーバイザーになられると思いますが、ここまで厳格な試験を実施しているのは、他のコンタクトセンターでも一般的なのでしょうか。
ここまで厳格に試験を実施している会社は、それほど多くはないと思います。
WOWCOMでは、コンタクトセンターの品質の鍵を握るのはスーパーバイザーであると明確に位置付けています。
そのため、スーパーバイザーとして活躍するために必要な知識は、会社の制度としてしっかりインプットします。そして、インプットだけで終わらせず、必ずアウトプットまで行います。
実技を通じてコミュニケーター(オペレーター)の品質を改善し、センター全体の品質を高めていく。それがスーパーバイザーのミッションだと考えています。
業務中のモニタリングと業務終了後の申し送り
━━━業務の最中にスーパーバイザーは品質改善のためにどのようなアクションを取られているのでしょうか。また、1日の業務が終わった後にも、何か実施されていることはありますか。
まず業務中は、取り組んでいる過程をモニタリングします。
そして1日が終わったら、その取り組みの中でできていたことや、「まず取り組んでくれてありがとう」という点も含めて、しっかり声をかけます。
この2つをセットで行っています。
━━━モニタリングについて、品質改善という観点で見たときに、WOWCOMならではの特徴はどのような点にありますか。
他の企業でも実施されていると思いますが、分かりやすい例でいうと、音声対応であれば、お客さまとの通話をリアルタイムでモニタリングします。
また、チャットのような文字によるコミュニケーションであっても、その内容をモニタリングしています。
━━━センターによって異なるとは思いますが、スーパーバイザーは同時に何名くらいのオペレーターを見ているのでしょうか。
センターの規模にもよりますが、その日にスーパーバイザーが2名、オペレーターが40名出勤しているというケースもあります。
ただ、スーパーバイザーはモニタリングだけをしていればいいわけではありません。入電状況に応じた人員配置や、時にはクレームのエスカレーション対応も行います。
そのため、スーパーバイザーをフォローする役割としてリーダーが配置されており、リーダーもスーパーバイザーと一緒にモニタリングを行う体制になっています。
━━━人によって改善すべき数値は異なることが多いと思いますが、業務中は一人ひとりについて細かくトラッキングしながら見ているのでしょうか。それとも、フィードバックした内容は、スーパーバイザーとリーダーの間できちんと共有しているということでしょうか。
そのとおりです。
フィードバックした内容は、スーパーバイザーとリーダーの間でしっかり共有しています。そうしないと、その後の声かけができなくなってしまいます。
共通のデータをもとに、モニタリングや声かけを行っているという状態です。
━━━つまり、スーパーバイザーとリーダーが連携しながら、担当しているオペレーターごとに重点的に見る項目を共有しているわけですね。もちろん他の数値も見ていく必要はありますが、特定のオペレーターに対しては、その項目を特に注視しながらマネジメントしているという認識でよろしいでしょうか。
はい、そのとおりです。
━━━それでは、1日の業務が終了した後についてお伺いします。品質改善に向けて、スーパーバイザーが業務終了後に行っていることはありますか。
その日にどのような声かけをしたのか、どのような様子だったのかといった内容は、ある程度記録し、きちんと共有しています。
なぜなら、コンタクトセンターは365日稼働しています。その日に声をかけたスーパーバイザーが翌日は勤務していないこともあります。
その場合、翌日の担当者が違う声かけや異なるフィードバックをしてしまうと、一貫性が取れなくなってしまいます。
そのため、いわゆる引き継ぎや申し送りの内容をデータとしてしっかり残し、それをもとに継続して品質改善に取り組んでいます。
━━━つまり、スーパーバイザーからオペレーターへの日報というよりも、翌日のスーパーバイザーやリーダーに向けた日報・申し送りというイメージですね。
手段が先行する品質改善に立ち止まる
━━━最後になりますが「なかなか品質が改善されない」と悩んでいるスーパーバイザーの方に向けて、「明日からまずこれをやってみてほしい」という具体的なアドバイスをいただけますでしょうか。
逆に、明日から一番やらないでほしいことをお伝えします。
品質改善に取り組もうとなった時に「とりあえず研修をしよう」「面談をしよう」「資料を作ろう」といったように、手段が先行してしまうことです。
そこは一度立ち止まってほしいと思います。
━━━なぜそう思われますか?
スーパーバイザーは現場改善のプロです。だからこそ、スピード感を持って行動できる方が多いと思っています。
そのスピード感があるがゆえに、すぐ行動へ移してしまうのですが、本来、品質改善には「こうなりたい」という理想の姿と、「現場の今」という現状があります。
その理想と現状のギャップこそが問題であり、その差を埋めるための行動が課題です。
にもかかわらず、そこを十分に確認しないまま「研修をします」「面談をします」「資料を作ります」と進めてしまうと、「それで本当に品質改善につながるのか」という話になります。
ですので、一度立ち止まって考えた上で進めることを、まず実践していただきたいと思います。
━━━営業などでよく言われる「To Be」と「As Is」、つまり理想と現状の考え方にも通じるものがありますね。As Is、つまり現状については、日々目の前にあるので自然と把握できていると思います。一方で、To Beである理想は、気付くと忘れてしまい、現実ばかりを見てしまうこともあります。WOWCOMでは理想の状態を見失わないために、どのような工夫をされているのでしょうか?
コンタクトセンターが掲げている理想については、当たり前のことではありますが、定期的にオペレーターやスーパーバイザー全員で「私たちのコンタクトセンターが目指すべき姿はここだよね」ということを確認しています。
例えば、月に1回の朝礼や夕礼で共有したり、全員が見られる掲示板に掲載したり、センターの壁に掲示したりといった、比較的アナログな取り組みを継続しています。
━━━結局のところ、具体的なアクションとしては、やはり声かけというところになるのでしょうか。
そうですね。一度伝えたら一生覚えている、というものではありません。
━━━アクションとしては声かけというシンプルなものではあるものの、声かけの質というところは一つのポイントなのかもしれませんね。
質と量をセットで動かしていかなければいけないと思います。
声かけの解像度を高くし、一人ひとりに合った声かけを行う。また、フィードバックの仕組みを活用し、理想を定期的に確認して見失わないようにする。
そして、手段先行にならないようにすることが重要です。
まとめ:品質改善で成果が出るコンタクトセンターの特徴
声かけの形骸化を疑う
周知や声かけ自体が改善行動にすり替わると、いつの間にか「相手がやってくれない」という他責の状態に陥ります。まずは自センターがその状態にないかを確認することが出発点です。
品質のゴールを定義する
何をもって「改善できた」と言えるのかを定めなければ、成果を証明できません。WOWCOMではスーパーバイザーがその設計を担い、センター長と合意形成しながら進めています。
フィードバックを型にする
抽象的なスローガンに具体的な数値と理由をセットで伝えることが、行動を変える鍵です。WOWCOMではこれを制度化し、実技試験の合格をスーパーバイザーの要件としています。
モニタリングと申し送りをセットで回す
業務中は過程をモニタリングし、終了後は声かけの内容を記録して翌日の担当者へ引き継ぎます。365日稼働だからこそ、一貫性を担保する仕組みが不可欠です。
手段先行を避ける
「とりあえず研修」「まず面談」と手段から入るのではなく、理想と現状のギャップを確認してから行動に移します。一度立ち止まる姿勢が、遠回りに見えて最短の改善につながります。
まとめ
品質改善の成否を分けるのは新しい施策の有無ではなく、ゴールを定義し、具体性のあるフィードバックを型として回し続けられる組織であるかどうかです。
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