【SVはコンタクトセンターの要 #3】予実管理の実態とは?
目次
要約
スーパーバイザーが管理する3つの品質と予実の対象
コンタクトセンターの予実管理は、業務品質・成果品質・応対品質の3軸で行われます。応答率やAHT、獲得率、モニタリングスコアなど、それぞれの品質に紐づくKPIを日・週・月単位で管理しています。
KPIが下振れしたときの初動と現場判断
応答率が目標を下回った際は、残業依頼やヘルプ要請、有人チャットへの誘導など、その場でできる短期対策を即座に講じます。人員配置についてはスーパーバイザーの裁量で判断できる体制が整えられています。
予実精度を高めるための原因思考と未来志向
今できる対処法を考えると同時に、なぜその状況が起きたのかを振り返る原因思考と、再発を防ぐ未来志向をセットで持つことが求められます。この二つを同時に動かす状態が理想とされています。
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概要
コンタクトセンターを運営するなかで、予実が計画どおりに進まず、対応に追われた経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
応答率が目標を下回ったとき、現場では誰が、何を考え、どのような手を打っているのか。
その判断基準は、意外と言語化されていないものです。
本稿では、業界経験25年のプロフェッショナルへの取材をもとに、WOWCOMのスーパーバイザーが実践する予実管理の対象、KPI下振れ時の初動、そして精度を高めるための思考法を解説します。
現場の意思決定を仕組みとして捉え直すことで、明日からのセンター運営に活かせるヒントをご紹介します。
【“SVはコンタクトセンターの要”シリーズとは?】
コンタクトセンターの成果は、現場を預かるSVの動き方で決まります。ただし、SVが力を発揮できるかどうかは、その上に立つ運営側の設計次第です。
本シリーズでは、業界経験25年・コンタクトセンターのプロフェッショナルである関口さんに、「明日のコンタクトセンター運営のヒントになること」そして「SVが輝く組織をどうつくるか」について、9話にわたってお届けしていきます。
※本編は“WOWCOMポッドキャスト”をテキスト化した内容です。またサムネイル画像およびYouTube内の画像にはDALL·E 3を使用しています。
スーパーバイザーが管理する「予実」とは何か
━━━WOWCOMのスーパーバイザーの方々は、予実管理をどのように行っていますか?
まず、何について予実管理をしているのかという対象からお話しします。
「品質の高いコンタクトセンターとは?」で、品質には「応対品質」「成果品質」「業務品質」の3つがあるというお話をしました。基本的には、この3つの品質に対する予実を管理していると捉えていただくと良いと思います。
━━━その3つを前提とした場合、どのように管理されているのでしょうか?
例えば業務品質であれば、応答率や入電件数、AHTと呼ばれる通話時間や後処理時間などを管理します。
成果品質であれば、獲得率やクロスセル・アップセル率、解約を抑止するリテンション率などです。
応対品質では、モニタリングスコアと呼ばれる「お礼が言えているか」「お詫びが言えているか」といった項目の達成状況や、クレームの発生件数・発生率などを管理しています。
営業で言えば分かりやすく売上がありますが、多くのスーパーバイザーは売上そのものよりも、今お話ししたような運営KPIの予実管理を中心に行っています。
それらを日単位・週単位・月単位で、予測と実績がどうなっているかを管理しています。
KGIとKPI、そしてセンターごとの指標設計
━━━KGIとKPIという考え方がありますが、商材やインバウンド・アウトバウンドなどによって、それぞれの品質指標は変わるのでしょうか?それとも、センターごとに品質の考え方自体が変わるのでしょうか?
KGIでいうと、最終的には企業ですので、お金という指標になります。
ご質問への回答と少しずれるかもしれませんが、KGIを主に追いかけているのはセンター長などのマネジメント層です。スーパーバイザーの中にもKGIを意識しているメンバーはもちろんいますが、一般的なスーパーバイザーは、KGIに基づくKPIの予実管理を担当しています。
また、担当する役割によって管理するKPIも異なります。
品質専門部門であれば応対品質のKPIを管理しますし、現場運営を担うスーパーバイザーであれば、業務品質や成果品質のKPIを中心に追いかけるイメージです。
━━━では結論として、WOWCOMではスーパーバイザーの方々はKPI管理のプロフェッショナルということですね。
そうですね。まずはそこが基本です。
━━━そもそも予実管理におけるKPIの設計は、コンタクトセンターの種類によって変わるのでしょうか。共通項目があり、その上でお客様の要望に応じてKPIが追加されるのでしょうか。それとも、すべてスクラッチでオリジナルのKPIを設計していくのでしょうか。
コンタクトセンターとして共通で持っている基本的なKPIの数や種類は決まっています。
ただし、どのKPIを最重要指標として追いかけるかは、センターごとに異なります。
例えば、応答率を最優先で死守するセンターもありますし、応答率は一定の基準を満たしていればよく、それよりもリテンション率を優先しているセンターもあります。
━━━どこにフォーカスするかは戦略によって変わるということですね。それはセンターを設計する段階で、WOWCOMとお客様がすり合わせを行い、どのKPIを重視するかを決めているという理解でよろしいでしょうか。
その通りです。
予実が下振れしたときの初動
━━━予実が常に100%一致することはなかなかありません。上振れも下振れも含めて、どうしても差が生じるものです。そのような場合、スーパーバイザーの立場では、まず何を考え、どのような初動を取るのでしょうか。
例えば、応答率を毎日80%以上維持することが求められるセンターだと仮定します。
朝からセンターを開けて、お昼12時の時点で応答率が70%だったとします。18時までの運営であれば、残り数時間で80%まで挽回することがスーパーバイザーのミッションになります。
その場合、まずは目の前でできる短期的な対策を講じることが最優先です。
例えば…
- 12時で退勤予定のスタッフに30分残業をお願いできないか。
- 他チームで業務が落ち着いているメンバーにヘルプを依頼できないか。
- あるいは別の視点として、電話が増えて応答率が下がっているのであれば、一部の問い合わせを有人チャットへ誘導できないか
など、まずは今できることを実行します。
━━━かなり流動的かつ柔軟に判断されていますね。残業の依頼や他チームへのヘルプ依頼、Webチャットへの誘導などは、どれも状況によっては正解にも不正解にもなり得ると思います。このような意思決定は、スーパーバイザーが自ら判断し、その場ですぐ実行するスタイルなのでしょうか。
そうですね。
━━━かなり訓練されていないと難しそうですね。
人員配置の調整、例えば残業をお願いしたり、隣のチームから応援を依頼したりといったことは、比較的スーパーバイザーの判断で柔軟に対応しています。とにかく現場をどうにかすることが最優先です。
一方で、有人チャットへ誘導するような施策は、状況によってクライアントの許可が必要になる場合もあります。
そのため、応答率が一定以下まで低下した場合には、センター判断でどのような対応を行うかについて、事前にクライアントとすり合わせをしておくことも重要です。
現場責任者としての裁量と、その根拠
━━━なぜそのような柔軟かつ質の高い意思決定ができるのでしょうか。事前にトレーニングを受けているからなのか、それとも「こういう状況ならこう対応する」というマニュアルやフローが整備されているからなのでしょうか。
コンタクトセンターによっては、立ち上げ時から対応フローが可視化され、マニュアル化されている場合もあります。
ただ、WOWCOMでは、スーパーバイザーは現場責任者という位置づけです。
最終責任はセンター長やマネージャーにありますが、現場で今起きていることについては、スーパーバイザーが責任を持って対応します。
そのため、自分にできる範囲で最大限動くことが求められ、その考え方は日頃から徹底されています。
━━━スーパーバイザーの裁量権はどこまであるのでしょうか。
人を残す、人を集めるといった人員配置については、ほとんどスーパーバイザーに任せているセンターが多いですね。
もちろん、残業をお願いすれば人件費が発生します。
それでも応答率が低下し、何とかしなければならない状況で、自分のセンターの目標値を理解したうえで、クライアントとの約束を守ること、そして電話を待っているお客様を放置しないことを目的としてスーパーバイザーが判断したのであれば、その判断を咎める理由はないと考えています。
━━━スーパーバイザーの方々は、センター長とのコミュニケーションや認識合わせができていないと、今お話しいただいたような判断をするのは難しいですよね。
そうですね。
月ごとのKPIや、自分たちのセンターが今どのような状況にあるのかについては、スーパーバイザーが常に把握しています。
そして、その変化に応じて適切にアクションを起こしていることが、強みの一つなのかもしれません。
短期対応と中長期の振り返りを同時に走らせる
━━━予実がずれたとき、スーパーバイザーの頭の中ではどのようなことを考えているのでしょうか。KPIが下振れしたとき、まずどのような考えが頭に浮かぶのでしょうか?
まずは、目の前の状況を何とかしなければならないという考えがあり、その結果として、先ほどお話ししたような人員を集めるなどの対応を行います。
それと同時に、中長期の視点でも考えています。
今日は今日で、今できることをやる。一方で、次に同じことが起きたときには、もっと良い判断ができるようにする。あるいは、そもそも同じことが起きないようにするために、なぜ今回この状況になったのかを振り返る。
つまり、短期対応と中長期の振り返り、この二つを同時に考えながら動いています。
━━━即断即決で対応すべきことと、中長期的な着地点を見据えたことの両方を同時に考えているということですね。本当に大変なお仕事ですね。
コンタクトセンターでは、「スーパーバイザーが要」とよく言われますが、まさにそのとおりで、スーパーバイザー次第でセンターのあり方は大きく変わります。
「できることはすべてやる」という姿勢
━━━長年のご経験の中で、KPIが下振れした際に「このスーパーバイザーのアクションは素晴らしい」と感じた具体的なエピソードはありますか。
先ほどからお話ししているようなことを、本当に「すべてやる」という姿勢ですね。
例えば、「この人はいつも定時で帰るから、残業をお願いしてもきっと断られるだろう」といった経験則を一度取り払い、全員に声をかける。
あるいは、普段はその業務を担当していない人にも「ダメでもともと」という気持ちで協力をお願いする。
「どうせ無理だろう」「やっても意味がないだろう」という先入観を捨て、自分が思いつくことをすべて実行してみる。そのような姿勢には、本当にすごいなと感じることが何度もありました。
━━━その「できることはすべてやる」という姿勢は、どのように培われるのでしょうか。
もしかすると、その人自身の本質なのかもしれません。
ただ、それが自分に求められている役割であり、その日たまたま大変な状況になったからといって、「今日は運が悪かった」で終わらせるのではなく「今この状況を何とかすることが自分の役割だ」と考える。そのために協力をお願いできることはお願いし、自分自身も汗をかく。
それがWOWCOMのスーパーバイザーには多く見られる特徴というか、そういう人がスーパーバイザーになっているのかもしれません。
予実精度を高めるために持つべき二つの思考
━━━予実を100%一致させることは難しい一方で、できるだけ精度を高めたいと考えているセンターは多いと思います。その精度を高めるために、明日からスーパーバイザーの皆さんが特に大切にすると良い考え方があれば、アドバイスをお願いします。
過去何年分ものデータをAIに投入して、比較的精度の高い予測値を出すことは、すでに人手ではなくオートメーションでできる時代になっていると思います。
ただ、その予測をもとに実際に現場を動かすスーパーバイザーが重視すべきことは別です。
今、目の前で起きてしまっていることは変えられません。だからこそ、今この状況に対して何ができるのかという対処法を考えること。
そして同時に、今後同じことが起きないようにするために、原因を考える原因思考と、未来に向けた未来志向をセットで持つこと。
この二つを常に意識してほしいと思っています。
━━━今何ができるかという視点と、原因思考・未来志向の二つの思考が同時に頭の中で動いている状態が、理想ということですね。
そうですね。
その状態を理想として追い続けていると、気づけば自然と身についているのではないかと思います。
━━━ちなみに、その域に達するまでには、どれくらいの時間がかかるのでしょうか。
WOWCOMの場合、スーパーバイザーになった時点で、先ほどのことはできます。
例えば、スーパーバイザーになったばかりの方でも、周りにいる先輩たちが「応答率が下がったから仕方ないよね」と諦めるような人たちではないんです。
たとえやった結果うまくいかなかったとしても、「何もせずにダメだった」のと、「できることをすべてやった上でダメだった」のとでは、自分の中に残るものが違います。
そのような環境で育っていくと、最初は打てる手の数こそ少ないものの、行動すること自体に臆病な人は少ないですね。
━━━具体的な打ち手の数は経験を積んだ方のほうが多いと思います。一方で、「今何ができるのか」を考え、最後までやり切ることが、WOWCOMのスーパーバイザーとして目指しているスタンスなのですね。
そうですね。それがWOWCOMのスーパーバイザーが共通して持っているスタンスです。
まとめ:コンタクトセンターの予実管理とスーパーバイザーの実践
3つの品質が管理対象
予実管理の対象は、業務品質・成果品質・応対品質の3軸に紐づくKPIです。応答率やAHT、獲得率、モニタリングスコアなどを日・週・月単位で追いかけます。
KPIの重点はセンターごとに異なる
基本的なKPIの種類は共通していますが、どれを最重要指標とするかはセンターの戦略次第です。センター設計の段階でクライアントとすり合わせて決定します。
下振れ時は「今できること」を最優先
応答率が目標を下回った際は、残業依頼やヘルプ要請、有人チャットへの誘導など短期対策を即座に実行します。人員配置は現場責任者であるスーパーバイザーの裁量に委ねられています。
裁量の根拠は目的の共有
クライアントとの約束を守り、お客様を待たせないという目的が明確であれば、コストを伴う判断も咎められません。センター長との日常的な認識合わせがその前提となります。
短期と中長期を同時に走らせる
目の前の対応をしながら、なぜこの状況になったのかを振り返ります。この二重の思考がスーパーバイザーの標準的な動き方です。
先入観を捨てて「すべてやる」
「どうせ断られる」といった経験則を一度外し、思いついた手をすべて試す姿勢が評価されています。やり切った上での失敗は、次の打ち手につながります。
原因思考と未来志向をセットで持つ
予測の精度向上は自動化が進む一方、現場を動かす思考は人にしかできません。対処法・原因・未来の三つを同時に考える状態が理想とされています。
まとめ
予実管理とは数字を眺める作業ではなく、下振れの瞬間に何を実行し、その後に何を仕組みへ変えるかという、現場責任者としての実行力そのものです。
【おすすめ資料】
品質の高いコンタクトセンター パーフェクトブック
