#13 コンタクトセンターの業務品質が下がる原因と改善のポイント
目次
要約
業務品質を下げる要因
業務品質の低下は、商品トラブルなどの外的要因と、センター内部のヒト・モノ・コトに起因する内的要因の2種類に分類されます。それぞれの要因を正しく理解することが、適切な対策の出発点となります。
「ヒト」の疲弊が生む負の連鎖とマネジメントの役割
オペレーターの疲弊は欠勤・離職へとつながり、センター全体のパフォーマンスを損ないます。スーパーバイザーやセンター長が当事者意識を持ち、階層ごとにフォローし合う組織的なアプローチが不可欠です。
「コト」への備えとリスク最小化の考え方
人事異動などのセンター内イベントは品質低下の引き金になり得ます。業務フローの可視化と属人化の排除を日常的に進めることで、突発的な変化によるリスクを最小限に抑えることができます。
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概要
コンタクトセンターの業務品質は、現場が忙しくなるほど静かに、しかし確実に低下していきます。
その背景には、見過ごされがちなヒト・モノ・コトそれぞれの内的要因が複雑に絡み合っています。 「忙しいから仕方がない」と片付けず、各階層が当事者意識を持って改善し続けることが、品質を守る唯一の道です。
本稿では、業務品質を低下させる外的・内的要因の構造と、それぞれへの対処法、そして高品質なコンタクトセンターを支える根本的な考え方を解説します。 13回にわたるシリーズの集大成として、現場で実践できる視点をご紹介します。
※前回「#12 コンタクトセンターにおける“業務品質”とは?」はこちら
業務品質を下げる外的要因と内的要因
━━━どのような環境やケースのときに業務品質は低くなってしまいますか?
業務品質が低くなる要因は、外的要因と内的要因の2つに分かれます。
外的要因としては、例えば不良品や健康被害が出るといった商品トラブル、あるいはインターネットの接続不良やサービスの不具合といったものが挙げられます。これらはコンタクトセンターの外部で発生する事象であり、オペレーターにはコントロールできない領域です。
一方、内的要因については、センター内で働くヒト・モノ・コトに関して何らかのトラブルや問題が起きている場合が大半です。
「ヒト」の疲弊が生む負の連鎖
━━━内的要因のうち「ヒト」という観点では、どのようなことが起きますか?
非常に忙しいセンターをイメージしてください。
電話・メール・チャットをひたすらこなさなければならない状態が続くと、オペレーターは精神的にも体力的にも徐々に疲弊していきます。そうなると品質を保つどころではなくなり、欠勤の増加やミスの多発、モチベーションの低下へとつながっていきます。
さらに、そのフォローにあたるスーパーバイザーもセンター全体の疲弊の影響を受け、十分なサポートができなくなる結果、人が辞めていくという悪循環に陥ります。
━━━根本的には、「忙しくしない」ことが解決策になるのでしょうか?
忙しくしないというよりも、「忙しいから仕方がない」と片付けてしまわないこと、見て見ぬふりをしないことが重要です。
━━━忙しさによって起きるメンタル面での悪循環を見て見ぬふりせず改善していく、という認識でよいでしょうか?
その通りです。その改善を担っているのが、スーパーバイザーやセンター長です。
「今は忙しいから仕方がない」「我慢してほしい」で済ませてしまうのではなく、当事者意識を持ち、忙しい中でもできることをやり続けることが重要です。
そうでなければエンゲージメントが下がり、離職にもつながっていきます。一生懸命頑張っているのに誰も見てくれないとなると、オペレーターの業務に対する意識や意欲はどんどん低下してしまいます。
━━━センターで負の循環が起きているとき、改善の焦点はどこに当てるべきでしょうか?
細かい部分にくさびを打っていくことになります。ただし、オペレーターに直接アプローチするのはオペレーター直属のスーパーバイザーの役割です。
一方で、フォローを続けることでスーパーバイザー自身が疲弊してしまうこともあります。そのすり減りをフォローするのが、その上にいるセンター長やマネージャーの役割だと考えています。
━━━組織のツリー構造の各層が当事者意識を持ち、それぞれのつながりを強めていくイメージですね?
そうです。例えば応答率が30%・20%まで下がっているとすると、センターはすでに疲弊しています。
「つながらない」というお声を第一線で受けているオペレーターが疲弊し、クレームに発展し、スーパーバイザーへエスカレーションされます。スーパーバイザーは怒鳴られながら必死に対応し、そこでまた消耗します。この状態を放置すると、まさに負の連鎖が続いていきます。
「モノ」に起因するストレスと職場環境の整備
━━━「モノ」は業務品質の低下とどのように関係してくるのでしょうか?
モノが与える影響はそれほど大きくはないのですが、従業員満足度調査などを行うと、意外とオペレーターから挙がってくるのが、パソコン・電話機・タブレット・ヘッドセットといった備品への不満です。こうした備品に不満を感じていると、それがストレスになることがあります。
また、休憩室が汚れている・散らかっているといった点も、些細なことと思われがちですが、モノに起因するストレスの影響は決して小さくありません。
━━━休憩室の環境づくりについて、WOWOWコミュニケーションズでは意識して取り組まれているのでしょうか?
1つの休憩室を2つのセンターのオペレーターが共同で使用するケースもあるため、その環境を整えることを大切にしています。
清掃といったベーシックな対応から、電球が切れている状態をそのままにしないといった細かい気配りまで、しっかり対応するようにしています。
━━━マニュアルやチェックシートがあるのでしょうか? それとも無意識のうちに行われているものですか?
無意識のうちに行われています。
━━━「おもてなしの心」が前提としてあるからこそ、自然と「こうしたほうがよい」という思いが生まれ、環境を整える行動につながっているのですね。
まさにそうです。
「コト」:センター内イベントが品質に与える影響
━━━内的要因の3つ目である「コト」とはどのようなものでしょうか?
「コト」は人的な要素も含みますが、例えばスーパーバイザーが別センターへ異動したり、新しいセンター長が着任したりといった、センター内で起こるイベントが内的要因として品質を下げてしまうことがあります。
━━━これは防ぎようがないように思いますが、どのように捉えればよいでしょうか?
防ぐこと自体は確かに難しいのですが、これはクライアント側の出来事ではなく、あくまで自社側の出来事です。そのため内的要因として捉えています。例えば、ベテランのスーパーバイザーが抜けたことでセンター全体のパフォーマンスに変化が生じるケースは、実際によくあります。
━━━その場合はどのように対応すればよいのでしょうか?
特定の人物がいなくなるとセンターが回らなくなるという状態は、本来あるべき姿ではありません。そのため、いつ人事異動が起きても対応できるよう、各スーパーバイザーが同じ水準でサービスを提供できるように育成する仕組みづくりが重要です。
コールセンターのスーパーバイザーはどうしても職人化してしまう傾向があります。「Aさんにしか分からない」という状態が生まれると、その人がいなくなったときに大きな空白が生じます。
だからこそ、業務フローの可視化と「なぜこの運用になっているのか」という疑問の解消を、日頃から地道に積み重ねていくことが必要です。
━━━発生し得るリスクを想定し、あらかじめ準備しておくという考え方でしょうか?
その通りです。人がいなくなるという事態は避けられないこともあります。リスクをゼロにすることはできませんが、だからこそリスクを最小限に抑えることが重要です。
「これはなぜこうなっているのだろう」「○○さんが決めたから分からない」という疑問をそのまま放置せず、きちんと可視化し、必要であればフローを見直していく。そうした日々の積み重ねこそがリスクを減らしていきます。
業務品質を高めるための本質的な姿勢
━━━業務品質を高くするために「やはりここが重要だ」と感じる点はどこでしょうか?
日々の改善を諦めないこと、恐れないこと、そしてやり続けることです。
━━━テクニックを実行すれば必ず品質が上がるという単純な話でもないということですね。シリーズ全体を振り返り、「品質の高いコンタクトセンター」として最も重要だと感じるポイントを教えてください。
業務品質・応対品質・成果品質という3つの円があり、その重なる真ん中にいるのは「人」です。
その中心にいる人全員が、自分事として動き続けること、やり続けること、諦めないこと、恐れないことが本質だと思っています。
今は、失敗することを怖いと感じる人も増えています。上司から「新しいことにチャレンジしなさい」と言われても、「失敗した自分でいたくない」という意識が働き、現状維持に流れてしまいます。
しかし、そこで止まることは進化ではなく退化です。だからこそ、中心にいる一人ひとりが自分の役割の中で当事者意識を持ち、遂行し続けることが何より重要です。
まとめ:コンタクトセンターの業務品質を守る改善の要点
外的・内的要因を正しく分類する
業務品質の低下要因は外的なものと内的なものに分かれます。コントロールできない外的要因と異なり、内的要因はヒト・モノ・コトの視点で整理し、対策を立てることができます。
「ヒト」の疲弊には組織全体での当事者意識が必要
オペレーターの疲弊を放置すると負の連鎖が生まれます。スーパーバイザーとセンター長がそれぞれの立場で「見て見ぬふりをしない」姿勢を持ち続けることが、品質維持の根幹です。
「モノ」と「コト」への細かな気配りがリスクを減らす
備品や休憩室といった環境の整備から、業務フローの可視化による属人化の排除まで、日常的な積み重ねが突発的な品質低下リスクを最小限に抑えます。
諦めずやり続けることが品質を生む
業務品質・応対品質・成果品質の中心にいるのは「人」です。一人ひとりが当事者意識を持ち、改善を恐れずやり続ける姿勢こそが、高品質なコンタクトセンターを支える根本です。
まとめ
業務品質向上に銀の弾丸はなく、組織の各層がそれぞれの役割の中で当事者意識を持ち、日々改善し続けるという地道な実践の積み重ねがすべての土台となります。
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