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【目的編】クレーム応対研修は、何をするのか?

更新日:
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【要約】「お客さまに引き続きサービスを利用してもらうこと」をゴールにクレーム応対を学ぶ

クレーム応対研修の目的とゴール:関係継続をゴールに据えた応対スキルの習得
WOWOWコミュニケーションズのクレーム応対研修では、単なる問題処理ではなく「お客さまに引き続きサービスを利用してもらうこと」をゴールとしています。そのためには、応対スキルだけでなく「何のためにそのスキルを使うのか」という視点が不可欠とされ、顧客との関係性維持に重きを置いた応対を研修で伝えています。

クレーム応対研修で重要視していること:心理的ニーズへの理解と対応
研修では、クレームを「心理的ニーズ」と「物理的ニーズ」の2要素で捉えることを重視しています。特に「気持ちをわかってほしい」という心理的ニーズへの対応が、信頼回復や関係継続に直結するため、その見極めと応対が重要だと伝えています。お客様自身が自覚していない感情面にこそ、丁寧に寄り添う姿勢が求められています。

クレーム応対の例(テレビを買ったが点かない):お詫びの一言が信頼の分かれ道
「テレビがつかない」という物理的問題に対し、オペレーターがまず「ご期待に添えず申し訳ございません」と伝えることが、応対の質を大きく左右します。心理的ニーズを軽視すると、たとえ解決策を提示しても「気持ちがわかってもらえていない」と感じさせ、かえって怒りに転じることもあります。だからこそ、最初のひと言が極めて戦略的なのです。

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クレーム応対の本質とは?

クレーム応対を学ぶ際、ただ「応対のやり方」を学ぶだけでは不十分です。その先にある「お客さまとの関係性」を重視する視点こそが、クレーム応対の本質です。

WOWOWコミュニケーションズでは、クレーム応対のゴールを「お客さまに引き続き当社のサービスや商品をご利用いただくこと」と明確に定めています。

そのため、スキル以上に「心理的ニーズへの理解」を重視しています。

本稿では、本質的なクレーム応対を学べる「クレーム応対研修」の目的や考え方をわかりやすく解説します。

単なる応対ではなく、“お客さまとの関係構築”までの発展を考えている、コンタクトセンター関係者の皆さまにおすすめの内容です。

スピーカー

富樫 雄太

SNSマーケティング会社、研修会社などを経て、2016年に(株)WOWOWコミュニケーションズへ入社。部門のマネジメントに当たる傍ら、クライアント企業の品質改善のコンサルティング/人材育成/品質調査/フィードバック等を担当。

インタビュアー

原澤 耀

合同会社HARAFUJI Co-Founder COO | 大学在学中の19歳より株式会社ギャプライズにてBtoCデジタルマーケティング、BtoBマーケティング、法人営業に従事。その後、チーターデジタル株式会社にて法人営業を経て、 現在は合同会社HARAFUJIの共同創業者として独立。BtoBマーケティングを中心とした戦略および戦術支援事業に従事している。詳しくはこちら

クレーム応対研修の目的とゴール

━━━WOWOWコミュニケーションズではクレーム応対研修を実施されています。研修内容の詳細に入る前に、まず、クレーム応対研修の目的とゴールを教えてください。

当社のクレーム応対研修のゴールは、クレーム応対そのもののゴールと重なりますが「お客さまに引き続き当社のサービスや商品をご利用いただくこと」です。この点を研修の中でもお伝えしています。

したがって研修の目的としては、クレームをくださったお客様が、通話終了時には「対応してもらってよかった」「引き続き利用してもいいかな」と感じていただけるような状態を目指すスキルを習得していただくことです。

━━━なぜ「お客様に引き続き当社のサービスや商品をご利用いただくこと」を目的に設定されたのでしょうか。私の安直な発想ですと「クレーム対応の仕方を学ぶ」、つまり、スキル習得をゴールとして設定します。

いくつか狙いがあるのですが、まず前提として、クレーム応対のためのスキルや知識、テクニックは世の中に多く存在しています。

しかし、重要なのは「それらのスキルを何のために使うのか」という点です。

突き詰めていくと、クレームをくださったお客さまに「最終的には気持ちよく通話を終えていただくためにスキルを使うべきだ」というのが当社の考え方です。

クレームをおっしゃるお客さまはさまざまですが、その中には、わざわざ時間を割いて電話をしてくださっているという点で、見方を変えれば非常に熱心なファンである可能性もあります。

また、クレーム内容自体にも、私たちが真摯に受け止め、サービス改善に活かすべき貴重なご意見が多く含まれています。

これらを踏まえると、1件1件のクレームに対して、単にスキルを使って処理するのではなく、大切に向き合い、最終的にはお客様と私たちの双方にとって良い形で通話を終えることが、クレーム応対における理想的なゴールであると考えています。

クレーム応対研修で重要視していること

━━━クレーム応対研修の中で特に重視されている点を教えてください。

当社のクレーム応対研修では「クレームのメカニズム」について重きを置いています。

具体的には、クレームの構成要素についてお話ししており、クレームとは「心理的ニーズ」と「物理的ニーズ」という2つの要素から成り立っていると説明しています。

「心理的ニーズ」とは、お客様の「この気持ちをどうにかしてほしい」といった感情面の訴えであり、「物理的ニーズ」とは、たとえば「商品が動かない」といった具体的な困りごとを指します。

クレーム応対を適切に行い、ゴールにたどり着くためには、このうち特に「心理的ニーズ」に対して丁寧にアプローチしていくことが重要だとお伝えしています。

━━━つまり、クレームを伝えるお客さまは「心理的ニーズ」と「物理的ニーズ」の両方を持っているということですね。

はい、その通りです。お客さまご自身がそのことを自覚されているとは限りませんが、両方のニーズを抱えていらっしゃいます。

たとえば、あるお客様が新しいテレビを購入し、設置も完了して「さあ、見よう」と思ったタイミングで電源が入らなかったとします。

このとき、お客様はテレビメーカーのコールセンターに連絡されるかもしれません。

このケースで言えば「テレビが動かない」というのが物理的ニーズです。

一方で「せっかく楽しみにしていたのに」「ワクワクしていたのに見られない」という落胆や失望の感情、つまり「この気持ちをどうしてくれるのか」という訴えが心理的ニーズです。

━━━もし私がこの「心理的ニーズ」と「物理的ニーズ」という概念を知らずにオペレーションしていた場合「テレビがつきません」という物理的な問題にはもちろん対応すると思います。ただ「楽しみにしていたのに」という前提を理解しておくことが、結果的に物理的ニーズの解決にもつながる…ということでしょうか。

そうですね、まずは、お客さまの心理的ニーズを受け止め、きちんと理解することが非常に重要だと考えています。

心理的ニーズをおろそかにして、いきなり物理的ニーズ、つまり具体的な困りごとへの対応に入ってしまうと、お客さまとしては「ちょっと待ってくれよ!」と不満を感じられ、かえって怒りを増幅させてしまう可能性があります。

ボーナスで買ったテレビの電源が入らない…どう応対する?

━━━では、解決策は何でしょうか?たとえば、私の手元にボーナスで買ったテレビが届き、楽しみにスイッチを押すも電源が入らない。説明書通りに操作してもダメで「どうなってるんだ!」と問い合わせることになります。その際、私なら冷静に「操作、どうしたらよいでしょうか?」と質問します。その時、心理的ニーズを理解しているオペレーターの頭の中はどうなっているのでしょうか?

まずは、お客さまが言葉にしている具体的な困りごと、つまり物理的ニーズをしっかりと把握します。

そのうえで、お客さまのお気持ちを想像することを大切にしています。

今回のケースであれば「このお客さまはきっと新しいテレビを心から楽しみにしていたのだろう」「ボーナスを使って購入し、設置も済ませ、さあこれから見ようというタイミングだったのに電源が入らなかった」という状況を想像します。

そういった背景をくみ取り「ご期待に添えず、誠に申し訳ございません」といった形で、まずはお客さまのお気持ちに対してお詫びの言葉を伝えます。

順番としては、まず気持ちに対する応対を行うことが先になります。

━━━たとえば私が「なぜテレビがつかないのですか?」と問いかけたとき「それはこういう理由です」といった説明をするのではなく、先ほどおっしゃっていた「ご期待に添えず申し訳ございません」という一言を最初に伝えるかどうかで、その後の応対に大きな違いが出るのでしょうか?

その後の応対の展開は大きく変わってくると思います。

もちろん、お詫びがなくても気にされないお客様も中にはいらっしゃいますが、多くのお客さまは「テレビがつかない」といった不具合に対して問い合わせた際、最初にきちんとしたお詫びの言葉があるかどうかを無意識のうちに気にされていることが多いです。

「説明の前にお詫びはないの?」という気持ちが生じるお客さまも一定数いらっしゃいます。

━━━整理の意味で改めて確認させてください。クレームを伝えるお客さまの中には「心理的ニーズ」と「物理的ニーズ」の両方が存在し、「物理的ニーズ」よりも「心理的ニーズ」を重視すべきだとおっしゃいました。その際、なぜ「物理的ニーズ」より「心理的ニーズ」を重視すべきなのか、改めて教えてください。

心理的ニーズを軽視し、物理的ニーズの解決だけを急ごうとすると、結果としてクレームがこじれやすくなるからです。

クレーム応対にあたるオペレーターの立場からすると、クレームが得意、好きという人は多くありません。多くの場合「早くこの応対を終わらせたい」という気持ちが自然と生まれてきます。

その結果として、心理的ニーズへの対応を後回しにし、物理的ニーズの解決に注力してしまうケースが少なくありません。

オペレーターとしては「お客さまが訴えている具体的な困りごとを解決できれば、この通話は終えられるだろう」と考えて応対します。

一方でお客さまは、「困りごとの解決ももちろん大切だけれど、その前にまず伝えるべきことがあるのではないか」と感じているのです。

たとえば、オペレーターが「それは故障なので交換しますね」と淡々と対応した場合、お客さまは「自分がどれだけ楽しみにしていたのか、何日も待っていたのにその気持ちをわかってくれているのか」と不満に感じてしまうことがあります。

このように、心理的ニーズへの適切な対応がないことで、結果としてクレームが深刻化する場合があります。

━━━私はテレビを楽しみにしていて、使えず、電話をしました。その際に「こうなんです」と説明をし、「ご期待に添えず申し訳ございません」と言っていただければ、確かに気持ちは少し落ち着くと思います。ただ、そもそもクレームを持つお客さまは「お気持ちに添えず申し訳ありません」といった言葉を期待しているものなのでしょうか?

これはお客さまによって異なります。

たとえば「とにかくテレビがつかないという、この困りごとさえ解決してくれればそれで十分」という方もいらっしゃいます。

一方で、数日前からテレビを楽しみにしていて、ようやく届いた、設置も済んだ、いよいよ観ようというその瞬間につかなかった…というような背景を持つお客さまの場合、その落胆の度合いは非常に大きくなります。

そのようなお客さまにとって、コールセンターに電話をして、応対したオペレーターが気持ちに寄り添う言葉をかけることなく、ただ解決策だけを淡々と伝えるという対応になってしまうと、がっかりした気持ちはより深まります。

その結果として、その「がっかり」が巡り巡って「怒り」として現れることがあります。

━━━それが以前お話されていた「最初からクレームを持っている方」と「話していくうちにクレームになる方」という分類に通じるものであり、「ご期待に添えず申し訳ございません」という一言がなかったことで応対がこじれてしまう要因になる、ということですね。ある意味、その一言は「保険」にも近いというか、私は個人的にはハウツーだけを聞ければ満足するタイプですが、全員がそうではない。だからこそ、ひと言添えることで、多くのケースでスムーズな応対につながる可能性が高くなる。これは戦術的とも言える。そのためにも、そもそも「心理的ニーズとは何か」を研修の中で伝えている、ということですね。

━━━なるほど、それが以前お話されていた「最初からクレームの方」と「話すうちにクレームになる方」の違いに通じますね。「ご期待に添えず申し訳ございません」という一言がないことで、応対がこじれる原因にもなる。私のようにハウツーだけで満足する人ばかりではないので、ひと言添えることが戦術的に有効で、心理的ニーズを研修で伝える重要性にもつながる…ということですね。

おっしゃる通りです。

心理的ニーズとは何か、どう受け止め、どう応対するかという考え方を研修でお伝えします。、の理解があるからこそ、一言添える重要性も納得感を持って身につけていただけるようにしています。

━━━ではここから「コールセンターにおけるクレーム」について、伺っていきます。コールセンターで発生するクレームには、どのような種類や傾向がありますか?

日々さまざまなセンターで、多様なクレームが発生しています。

クレームの種類については、各センターで分類などされているかと思います。ただ、基本的には「商品やサービスに対して思っていたのと違う」と感じたときにお客様の主張として現れますので、これについてはどのコールセンターでも共通ではないでしょうか。

例えば最初は通常のお問い合わせだったものの、オペレーターの態度や言葉遣いが不適切だったために、クレームに発展することもあります。実際に「その対応は何ですか?」とお客様から指摘され、オペレーターの応対が原因で途中からクレーム化するケースもあります。

━━━今のお話だと、時間軸としては電話をかける前からすでに期待とのズレがあるパターンと、話す中でズレが生じていくパターンがあるということですね。

引用元:クレームとは?そして、コールセンターで起こる課題。

まとめ:クレーム応対研修の本質とは何か

応対の目的は「顧客との関係継続」
クレーム応対のゴールは問題解決ではなく、対応を通じて顧客に「今後も利用したい」と思ってもらうこと。スキルは目的ではなく、その関係維持の手段である。

「心理的ニーズ」の理解が鍵
クレームは「物理的ニーズ」だけでなく、「感情に寄り添ってほしい」という心理的ニーズを伴う。後者を丁寧に扱うことが、信頼構築につながる。

お詫びの一言が応対を左右する
解決策の提示よりも先に「ご期待に添えず申し訳ございません」と伝えることで、顧客の感情を和らげ、クレームの深刻化を防げる。

クレーム応対は、単なるスキルの習得ではなく“信頼回復と関係維持のための対話”であることを、研修の核心に据えている。

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この記事を書いた人

猪越 みなみ

2023年WOWOWコミュニケーションズ入社。 過去カスタマーサポート、BPO業務のソリューションセールスに従事。 現在は、営業の経験を活かし、BtoBマーケティング領域の営業企画を担当。

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