クレーム応対の方針が不明確な時に起こる問題と応対

目次
【要約】応対のばらつきと不安を防ぐには、手順の明文化とマインドの共有が鍵
手順や方針が社内で不明確な場合に起こる問題と整備すべきこと:
応対手順が明文化されていないと、クレーム応対が属人的になり、応対力にばらつきが出る。また、応対者の不安が高まり、応対品質が低下する原因にもなる。まずは「話を聞く」「心情を汲み取る」などの基本的な応対手順を明確にし、声によるリアクションを意識するなどの姿勢も含めて、社内での標準化が求められる。
クレーム応対のナレッジを連携して溜める:
良質な応対や失敗例をナレッジとして蓄積・共有するには、SVや管理者の能動的な拾い上げが重要。現場の1on1や朝礼で相槌の工夫や応対事例を共有することで、実践に根ざした知識が定着していく。オペレーター1人に負担をかけず、チームで連携しながら学びを循環させることが鍵となる。
クレーム応対では仕組みも大事だが、それ以前に「優しさ」が大事。:
応対の技術やフローを整えるだけでなく、「一緒に乗り越える」という心構えが現場を支える。長時間の応対後には声かけや休憩の促しなど、オペレーターへの思いやりが不可欠。マインド研修は単なる理想論ではなく、困難な場面で立ち返るための基盤として、スキルと並行して育てるべきものである。
※おすすめ資料:品質の高いコールセンターの仕組み
※本編は“WOWCOMポッドキャスト”をテキスト化した内容です。またサムネイル画像およびYouTube内の画像にはDALL·E 3を使用しています。
クレーム応対の基本と仕組みづくり
多くのオペレーターがクレーム応対において「どう応対すればよいのか分からない」という不安を抱えたまま、現場に立っています。
しかし、手順や方針を明確にするだけで、応対の不安や属人性を大きく軽減できます。
実際に、基本の手順を明文化し、声によるリアクションなどを徹底することで、クレームの発生を抑える現場も増えています。
本稿ではコンタクトセンターの品質管理部門であるWOWCOMカレッジより、「手順の整備」「ナレッジの共有」「優しさというマインド」の3つの視点から、クレーム応対の基本と仕組みづくりを紹介します。
手順や方針が社内で不明確な場合に起こる問題と整備すべきこと
━━━クレーム応対における手順や方針が社内で不明確な場合、現場ではどのような混乱や影響、具体的な問題が発生するのでしょうか?
手順や方針がコールセンター全体で定まっていないと、応対が属人的になり、人によってやり方がバラバラになります。
結果として、応対できる人が限られてしまうという問題が生じやすくなります。
また方針が不明確だと、いざクレームが来たときに「どうすればいいのか?」とオペレーターが不安を感じることになります。その結果、不安はモチベーションの低下にもつながる可能性があるでしょう。
━━━確かに以前のお話で「応対の質によってクレームが途中から発生」してしまうというケースがありましたね。
━━━事前のズレについては想像がつきやすいのですが、今のお話で気になったのは「話していく中で徐々にクレーム化するケース」です。これはどういった要因があるのでしょうか?
要因として多いのは、オペレーターの応対があまり良くなかったケースです。
たとえば、言葉遣いや態度が適切でないなど、お客様が不快に感じるような対応があると、途中からクレームに発展することがあります。
また、オペレーターの応対自体に問題がなくても「サービス自体が手間がかかる」「わかりにくい」「面倒」といった場合には、その不便さに対してクレームが出ることもあります。
さらに、たらい回しにされるといったケースもあります。
━━━こうした不安を抱えた状態での応対が原因になることもある。ちなみに、生まれつきクレーム応対が得意という方はいるのでしょうか?
「生まれながら得意」という人はあまり見かけませんが、性格やタイプによって、あまり苦にしないという方は一定数います。
ただ、多くの方は「クレームは苦手」「応対に不安がある」といった意識を持っているのですが、まれに「全然問題ないです」「任せてください」と頼もしく感じられる方もいらっしゃいます。
━━━では次に、クレーム応対の方針を明確にしていくうえで、現場はまず何を整備すべきでしょうか?
いわゆる「正当なクレーム」に関する応対を対象にする場合、応対の基本的な手順はすでにある程度体系化されており、研修等で学ぶことができます。
そのため、まずは自分たちのセンターで、どういった手順を正式に採用するのかを決めることが第一歩になるのではないでしょうか。
たとえば「まずお客様の話をしっかり聞く」「お客様の心情を理解することに努める」といった点は、クレーム応対におけるコミュニケーションの基本として重要です。
※参考記事:【コールセンターの研修】クレーム応対研修 | クレームは「おさめる」ものではなく「おさまる」もの。
━━━実際に富樫さんが現場のお客様より「お話をうまく聞けるようになりたい」と質問を受けた場合、どのように伝えるのでしょうか?
私たちが提供している研修の内容で言うと、まず電話応対では顔が見えません。だからこそ、「聞いていますよ」という姿勢を“声”で伝える必要があります。
具体的には相槌をきちんと声に出して伝える、あるいはお客様の言葉を復唱する、「つまりこういうことでしょうか?」といった言い換えを使う。こうした方法で、口頭で「聞いている」という意思を示すことを研修でお伝えしています。
━━━「聞く」というのは単に耳に入れるだけではなく、リアクションを通じて「聞いている」という意思を伝えることなんですね。
はい。たとえ本当に聞いていても、オペレーターが無言でいると、お客様からすると何も反応が返ってこないので「聞いているのか?」と不安になってしまいます。
「はい」「ええ」「左様でございますね」など、声に出して相槌を打つことで、「ちゃんと聞いてくれている」と伝わります。
※関連記事:コールセンターの“高い”応対品質とは?
クレーム応対のナレッジを連携して溜める
━━━今回の前提が「クレーム応対」ですが、クレームというと、お客様が一方的にまくし立てるような場面もイメージされます。そうした場面でも相槌を打つのでしょうか。相槌に対して「今話してるんだよ!」と怒るお客さまもいらっしゃるかと思いますが、その点はどう応対されていますか?
基本的には、たとえクレームであっても相槌は打ちます。
ただ、原澤さんが今おっしゃったような「話をかぶせる」「遮る」といった行為は絶対に避けるべきです。お客様が話している最中に反論したり口を挟んだりするのは望ましくありません。
お客様のお話がどれだけ長く、感情的だったとしても、きちんと相槌を打ちつつ、話が終わるまでは絶対に遮らず、受け止める姿勢が特にクレーム応対では重要です。
━━━「遮ること」と「相槌を打つこと」は全く別なんですね。これは何度も聞いてきた話ですが、今日改めて教えていただいて、「わかった」からといってすぐにできるようになるものではなく、やはり地道なトレーニングやSV(スーパーバイザー)からのフィードバック、1on1でのフォローアップが必要なのですね。
そうですね。しっかりとしたフォローと継続的なトレーニングがあってこそ、実践できるようになります。
※参考記事:スーパーバイザー(SV)に求められることとは?
━━━正当なクレームを前提としたときに、遮ると相槌は違うなどのテクニックもなるほどと思ったのですが、こうした知識が現場に浸透するのはまた別の課題だと思います。テクニックをうまく浸透させるための仕組みや工夫はありますか?
浸透させるには、やはり地道に伝え続けることが基本になると思います。
たとえば、朝礼で「今月は相槌を強化しましょう」といった形で管理者が繰り返し伝える。また、先ほども出たように、1on1のモニタリング結果を基にSVがフィードバックを行う際に「相槌のバリエーション」について具体的に触れるなど。
そういった継続的な働きかけが浸透のベースになります。
━━━その「伝え続ける」に含まれるとは思いますが、クレーム応対に限定した場合、朝礼などで「先日こういうクレーム応対がありました」というように、良かった点・うまくいかなかった点を日々共有しアップデートしていく、というイメージでよいのでしょうか?
はい、それも非常に有効です。
実際にあったクレーム事例を共有するのも良いですし、もしそのクレーム応対がうまくいって、お客様が最後に「これからも御社のサービスを使い続けます」と前向きに終話されたような成功事例があれば、そうした応対事例を皆に共有するのも有効です。
━━━その「成功したクレーム応対」は、オペレーターさんが自らSVやセンター長に報告しないと、ナレッジとして残らない気もします。非常に有用な資産だと思うのですが、リーダー側が拾い上げるのか、自然にシェアが起こる仕組みがあるのか、どうすればうまく現場に反映されていくのでしょうか?
状況によって異なりますが、クレーム応対はオペレーター一人で対応を完結させるのが難しい場合も多くあります。そのため、オペレーターが自ら支援を求め、SVや上長が対応に加わる場面も少なくありません。
その際、クレーム応対を引き継いだSVは、対応の中心となって案件に関わることになります。そして、最終的にクレームが円満に収束し、スムーズに終話できた場合には、SV自身がその経緯を把握しているため、自然と共有する流れが生まれます。
つまり、現場でのリアルな連携の中で、成功事例はSVや管理者から発信されるケースが多い。そういった情報の流れがあると、ナレッジとして現場にしっかり根付かせることができるのではないでしょうか。
━━━連携プレーですね。
そうですね。クレームをオペレーター一人で応対するのは負荷が大きいですし、やはり連携しながら進めていく必要があります。
※参考記事:【コンタクトセンターのナレッジ管理】理想は「エンドユーザーを含めた視点」を持つこと。
クレーム応対では仕組みも大事だが、それ以前に「優しさ」が大事。
━━━一方で、うまく応対できずに終話した場合、オペレーターに声をかけるなどのフォローも大切なのでしょうか?
それは非常に大切です。
クレームに対して苦手意識を持っている方が多い中で、長時間応対をされたオペレーターがいた場合は、終話後に声をかけてあげたり、一度休憩を促したりするなどのフォローが必要です。
仕組みも大事ですが、それ以前に「優しさ」のようなメンタリティが大前提です。オペレーターに対するサポートや気遣いという意味でも、そうしたマインドは必須だと考えます。
━━━「コールセンターの研修、詰め込みで完璧に習得できるのか?」にて“前提にマインドの研修がある”とおっしゃっていたのは、まさにそういう部分につながってくるということですね。
はい。心構えとして「オペレーターをサポートする」「一緒に乗り越える」といったマインドセットは非常に重要です。そうしたベースがあることで、制度や仕組みもうまく機能するようになります。
━━━マインドが大切というのはよくわかるのですが、時にそれが「綺麗事」に聞こえてしまうこともあると思います。しかし、今のように、実際の失敗事例の中で「あのマインドを学んでいたから、こう切り替えられた」というような繋がりが生まれると、たとえ結果がうまくいかなかったとしても、次に活かせる。その意味でやはりマインド研修は重要なんですね。
おっしゃる通りです。マインド研修は、ただ理想論を語るものではなくて、現場で起こる「うまくいかない」「しんどい」場面に立ち返れる“土台”のようなものです。
だからこそ、スキル研修とセットで、マインドを育てることがとても大切ではないでしょうか。
まとめ:クレーム応対に必要な方針と現場力の高め方
応対方針の不明確さは属人化と不安を招く
クレーム応対の手順や方針が曖昧なままだと、現場応対が属人的になり、オペレーターの不安やモチベーション低下を引き起こす。基本手順の明文化と、声で“聴いている”姿勢を伝える実践スキルが重要である。
ナレッジの共有はチームで行うべき連携活動
成功事例や失敗例を蓄積・共有するには、SVや管理者が日々のモニタリングや朝礼を通じて意識的に拾い上げ、全体に伝える工夫が求められる。属人化させず、継続的なチーム連携がナレッジの根付きに繋がる。
「優しさ」こそが現場力の土台になる
制度や仕組みの整備以上に、クレーム応対の現場では「一緒に乗り越える」というマインドセットが不可欠。マインド研修はスキル定着の前提であり、現場での困難を乗り越えるための心理的支柱となる。
応対品質の安定化には、仕組み・ナレッジ・マインドの三位一体が不可欠です。
【おすすめ資料】
品質の高いコールセンターの仕組み
~成果と応対、それぞれの品質を確かめる「問い」~
