#6 コンタクトセンターの応対品質で「最も難しい課題」とは?
要約
「とにかく、応対品質を高めたい」…どうする?
いきなり理想像を置くのではなく、まず現状の課題を顧客と共に言語化する。経営層と現場双方にヒアリングし、応対・業務・設計のどこに不足があるかを整理。KPIやモニタリングを基に、必要な部分をオーダーメードで再設計していく考え方が重要。
コンタクトセンターの応対品質で「最も難しい課題」とは?
「何となく品質が低い」という漠然とした課題への対応が最も難しい。電話・チャットなどチャネルや利用者層で期待値は異なり、見当違いの施策は現場に負担を残す。前提条件を共有し、順序立てたアセスメントを行うことが不可欠。
応対品質を高めるうえで最も重要視すべき考え方
根底にあるのは「おもてなしの心」。顧客の期待を想像し、不快にさせないことを第一に考える姿勢が品質の軸となる。企業ごとに形は異なるが、ブランドや品質ポリシー、KPIと整合した応対であることがバランスの要となる。
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概要
コンタクトセンターの応対品質を高めたい。
そう思ってはいるものの、「どこから手を付けるべきか分からない」「決して悪くはないが、もっと良くしたい」という状態で止まっているコンタクトセンターは少なくありません。
実は、応対品質が伸び悩む多くのケースでは、応対そのものではなく、課題の捉え方や設計の順序に原因があります。
WOWOWコミュニケーションズは、現場と経営双方の視点、KPI、顧客接点の特性を踏まえたアセスメントを通じて、改善余地を構造的に明らかにしてきました。
具体的には、応対・オペレーション・チャネル設計を切り分け、スクリプトやFAQ、研修の在り方まで含めてオーダーメードで再設計していきます。単なる研修導入ではなく、「何を変えるべきか」を特定するところから着手します。
本稿では、応対品質向上が難しくなる理由と、その突破口となる考え方を整理します。コンタクトセンターにとって最適な改善の方向性を見極めたい方にとって、判断軸が明確になるはずです。
※前回「#5 「お客さまの事前期待に応える」コンタクトセンターの応対品質」はこちら
「とにかく、応対品質を高めたい」…どうする?
━━━前提となる知識も含めてお伺いしたいのですが、応対品質を高める際には、どのような考え方をすると向上していくのでしょうか。
WOWOWコミュニケーションズがコンタクトセンターの設計、もしくは再設計を行う場合、いきなり「理想はここです」とゴールを設定することはありません。
まず、現在どこに課題を感じているのか、あるいは課題そのものが明確になっていない場合は、どこに課題があるのかをお客様と一緒に探していきます。
そうしたプロセスを通じて「高めたいものの理想像は何か」を明確にし、その理想に対して「何が不足しているのか」「何があれば理想に届くのか」を整理します。
コンサルティングという言葉を使うほど堅いものではありませんが、OWOWコミュニケーションズとお客さまが一緒に考えながら、設計や再設計を進めていくという考え方です。
━━━「応対品質を高める」と言っても、その“高さ”にはさまざまな段階があると思っています。例えばテストであれば、60点を高いと捉えるのか、70点、80点、あるいは99点を目指すのかという違いがあります。仮に私がカスタマーセンターの責任者だったとして、WOWOWコミュニケーションズさんのようなプロを前にすると、「とにかく高めたいです」と漠然と相談してしまうと思います。「決して低い状態ではないけれど、もっと良くしたい。」…このように相談された場合、関口さんはどのように回答されますか?
もし原澤さんがセンター長で、私がご相談を受ける立場であった場合、原澤さんお一人だけにヒアリングをすることは恐らくありません。
というのも、現場の方々が感じている課題と、経営層や管理層の方々が感じている課題は、意外と異なることが多いからです。
双方にヒアリングを行ったうえで、総合的に見て「ここは平均点以下」「ここは平均点」「ここは平均点以上」といった整理をします。
例えば、応対に関するクレームが多いのか、オペレーションミスや誤った案内によるクレームが多いのかといった内容によって、打ち手は大きく変わってきます。
話し方や伝え方、接客態度といった応対そのものに対するクレームが多いのであれば、応対品質に直接テコ入れをします。
一方で、案内ミスが多く、それが原因でクレームが発生している場合は、そもそものオペレーション設計、つまりスクリプトやFAQ、ツール類がうまく機能していない可能性があります。その場合は、それらを再設計しましょう、というご提案になります。
━━━ 一つ気になったのですが「平均より高い・低い」というお話がありましたが、その平均値とは業界全体の平均なのでしょうか。それとも、お客様のセンター内で何らかのデータを集めて算出する平均なのでしょうか?
多くのコンタクトセンターやコールセンターでは、KPIと呼ばれるさまざまな指標を持っているはずです。
例えば接続品質であれば、100本の電話がかかってきたうち80本に応答できた場合、応答率は80%といった形で測定されます。
また、エスカレーション率や一次解決率と呼ばれる指標もあります。一度の電話でお客様の用件が解決できた割合が高ければ、高い一次解決率となります。
この数値が高い場合、お客様は一度の電話で用件が済んでいるため、顧客満足度が大きく下がることは少ないと考えられます。
逆に、一度の電話で解決できず、担当者からの折り返しを待たなければならない状況が続くと、一次解決率は下がり、「なぜこの電話で解決できないのか」という不満やクレームにつながりやすくなります。
こうした指標をすでにお持ちであれば、それらを確認しながら改善を進めますし、もし指標が整備されていない場合は、WOWOWコミュニケーションズが運営している「WOWCOM college」という品質を担保するための専門組織が、モニタリング評価に入らせていただきます。
そのうえで、「御社のセンターの課題はここにあります」という診断を行い、「この点を再設計しませんか」という流れでご提案をさせていただきます。
━━━結論としては、オーダーメードということになるわけですね。
そうですね。もちろん、お客様側で明確な課題があり、「誰が何と言おうと、私たちのセンターはここを解決する」とはっきり決まっている場合には、いわば既製品のような形で、「ではAという研修をご提供します」といった対応になります。
一方で、そうした明確な課題設定がない場合には、アセスメントを通じて課題を洗い出し、オーダーメードで一緒に解決していくところが、WOWOWコミュニケーションズの特徴だと思っています。
コンタクトセンターの応対品質で「最も難しい課題」とは?
━━━例えば「言葉遣いが良くない」というようにミクロな課題が明確であれば、すでに手法をお持ちなので、「これを実施してください」という形で、比較的短いやり取りで解決できますよね。ただ、「何となく応対品質が低い気がする」といった漠然としたご相談の場合、最終的にお客様は端的な答えを求めていることもあるかもしれませんが、理想論としては、やはり理想の姿から入るべきだと思います。
オーダーメードで分析していく中で、実は課題は言葉遣いではなく、そもそもスクリプトが整備されていない、といった結論に至ることもあるわけですよね。
ここで経験則としてお伺いしたいのですが、どのような課題が最も難しいのでしょうか?
例えば私はマーケターですが、戦略を立てる際は必ず「お客様の声はありますか」とお聞きします。BtoBでもBtoCでも、実際に商品を購入してくださったお客様の声を聞くことで、「ご高齢の方に支持されている」「こういう課題を持った方に向けた商品なんだ」といった仮説が立てられます。
そうすると、まずはそこに集中して取り組みましょう、とスピーディーに動ける。ただ、それだけでは次の一手がなく、いずれ行き詰まってしまうので、もう一段上の全体戦略を組んでいくのですが、コンタクトセンターの場合はどうでしょうか。
さまざまなお話を聞いていく中で、よくある課題や、お客様がつまずきやすいポイントは何なのか。また一方で、先ほど私が申し上げた「まずはお客様の声を聞く」というように、最初にここを押さえるだけでも大きく変わる、というポイントはあったりしますか?
正直なところ、「これさえやれば必ず大きく改善する」というものは、個人的にはあまりないと考えています。
現在は顧客接点が電話だけでなく、WEBやLINE、チャットボットなど多様なチャネルに広がっており、チャネルごとに課題の性質も変わってきます。
例えばWOWOWの場合、電話チャネルを利用されるのは60代、70代といった高齢層の方々が中心ですが、ホームページのFAQや有人チャット、チャットボットを利用されるのは30代から50代といった比較的若い方々になります。
そのため、それぞれのチャネルや利用者層に合わせた取り組みを行わなければなりません。
仮に電話チャネルで応対クレームが多いのであれば、明るい挨拶をする、丁寧な言葉遣いを徹底するといった改善策が考えられますが、それと同じことをそのまま有人チャットで行ってしまうと、期待される接客とは異なり、むしろありがた迷惑になってしまうこともあります。
再設計が必要なコンタクトセンターであれば、こうした前提条件や材料をきちんと共有していただいたうえで、順序立てて進めていく必要があります。
見当違いの施策を行った結果、「何も改善しなかった」「あれだけ苦労したのは何だったのか」という状況になってしまうと、最終的には現場を運営しているスーパーバイザーや、最前線でお客様対応をしているオペレーターに、そのしわ寄せがいってしまうのです。
━━━例えば、WOWOWコミュニケーションズさんが解決者として関わる場合、押さえるべきポイントは、お客さまのポリシーやブランドイメージ、そして先ほどお話しいただいたさまざまな指標を踏まえたうえで、センター長だけでなく現場の方々にもヒアリングを行い、課題を的確に捉えていくことになりますよね。つまり、「課題整理」「ポリシーの理解」「チャネルの理解」という三点をまず押さえるイメージなのか、それとも総合格闘技のように、常に多角的に俯瞰して見ているイメージなのでしょうか?
WOWOWコミュニケーションズではさまざまな業界・業種のコンタクトセンターを手がけているため、ある程度の「当たり」は持っています。
ただ、その当たりを前提に先走ってしまうのは良くありません。
あくまでも、コンタクトセンターで現在お困りの方々ときちんと対話を行い、アセスメントをした結果として「現状はこうです。であれば、この課題を解決するために、こういった打ち手はいかがでしょうか」とご提案をさせていただきます。
そのうえで、それを実現するためにふさわしい研修や業務の変え方をお伝えし、応対品質・成果品質・業務品質を高めていく、という流れになります。
━━━最後の質問になりますが、今回いろいろなお話を伺った中で、結局のところ、応対品質を高めるうえで最も重要視すべき考え方、ひいては意識とは何だと思われますか?
まとめるのはなかなか難しいですね。
ただ、原点に立ち返ると、以前お話しした「おもてなしの心」に尽きると思います。お客様に喜んでもらいたい、期待に応えたい、お客様を想像したうえでその期待に応える、というのがおもてなしの心です。
WOWOWコミュニケーションズは、コンタクトセンターを利用する消費者のお客様と、WOWOWコミュニケーションズにとってのお客様であるクライアント様、その二つのお客様に対しておもてなしの心を持ち、センターの運営・設計を行っています。
また、コンタクトセンターを運営しているクライアント企業の皆さまにも、ご自身のセンターに電話をかけてくる消費者のお客様に対して、おもてなしの心を持っていただくことが重要だと考えています。
このおもてなしの心のあり方は、企業の品質ポリシーやブランドイメージによって異なります。会社が100あれば、おもてなしも100通りあります。ただ、根底にあるのは、お客様に嫌な思いや不快な思いをさせないこと、そしてお客様の期待を想像し、それに応えること。ここが一番の根っこだと思います。
━━━ 素晴らしいですね。私もマーケターとして考えると、BtoBであれば私のお客様はWOWOWコミュニケーションズさんのような企業ですが、その先には御社のお客様がいて、さらにその先にはBtoCの一般消費者の方々がいらっしゃいます。つまり、すべてのステークホルダーに対して、まずおもてなしの心を持つことが大前提であり、その先にさまざまな方法論がある、ということですよね。
コンタクトセンターは顔の見えない接客業なので、非常に奥が深い分野です。やろうと思えばいくらでもできてしまいますし、やり過ぎることも、逆にやらなさ過ぎることもできてしまう。
だからこそ、どの程度が適切なのか、そのバランスを取ることが重要になります。そのためには、センターの品質ポリシーやブランドポリシー、そして求めているKPI・KGIといった指標がきちんと見えていないと、ちぐはぐなセンターになってしまいます。
まとめ:応対品質を高める鍵は「課題特定→再設計→思想の統一」にある
理想から入らず、現状の課題を特定する
「とにかく改善したい」という相談ほど、まずは課題の所在を言語化することが先決。経営層と現場の双方にヒアリングし、現状を相対評価したうえで不足点を整理する。
応対・業務・設計を切り分け、KPIで打ち手を決める
応対クレームなら話し方・態度へ、案内ミス起因ならスクリプト/FAQ/ツールなどオペレーション設計へ。応答率・一次解決率・エスカレーション率等の指標を基に再設計する。
チャネル特性とブランドに沿って「おもてなし」を定義する
電話・Web・チャット等で期待される対応は異なり、施策の転用は逆効果になり得る。品質ポリシー・ブランドイメージ・KPI/KGIと整合した「おもてなしの心」を全体原則として統一する。
一言まとめ
本記事は、応対品質向上を「研修導入」ではなく「課題特定と設計の再構築」の問題として捉え直し、最適解を導くための判断軸を提示している。
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