#5 「お客さまの事前期待に応える」コンタクトセンターの応対品質
要約
応対品質で欠かせない要素とは?
応対品質の本質は丁寧さそのものではなく、顧客満足を高めるために「顧客の事前期待」と接客設計を一致させる点にある。電話は「すぐ繋がる・正しく答える・解決する」という期待が前提であり、ブランドやサービス特性ごとに求められる応対の基準自体が異なる。
シチュエーション別応対例
給湯器故障のように緊急度が高いケースでは、まず不安や焦りに寄り添い、理解している姿勢を明確に示すことが重要となる。一方、法人カードの利用不可のように即時性が低い場合でも、戸惑いや不便さを受け止めたうえで、必要情報を確認し解決へ進める。
シチュエーション別の応対の違い
応対の違いを分けるのは事象そのものよりも、センターが掲げる品質ポリシーである。寄り添い重視なら共感を起点に、解決重視なら質問による状況整理を優先する。アウトバウンドの場合は、顧客の緊急度・重要度や商品特性を見極め、距離感を調整する設計が不可欠。
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概要
コンタクトセンターの応対品質を高めようとしているが、「結局、丁寧にすればいいのか」「何を基準に設計すればいいのか」が曖昧なまま、現場任せ・属人化に陥っているケースは少なくありません。
実は、応対品質は“接客スキル”の問題ではなく、顧客の事前期待や緊急度、ブランドポリシーを踏まえた設計次第で、成果に直結するかどうかが大きく変わります。
本記事では、給湯器トラブルや法人カード、サプリメント販売といった具体事例をもとに、シチュエーションごとに「寄り添うべきか」「解決を急ぐべきか」をどう判断し、応対を組み立てるべきかを整理しています。
応対品質を感覚論ではなく、再現性のある設計思想として捉えるためのヒントとして、自社コンタクトセンターの品質基準やスクリプト設計の検討にお役立てください。
※前回「4 コンタクトセンターで高い応対品質を生み出す方程式とは?」はこちら
応対品質で欠かせない要素とは?
━━━おもてなしの心や傾聴の方程式以外に「応対品質とは何か?」を語る上で、欠かせない要素は他にもありますか?
おそらく、応対品質を向上させるための取り組みというのは、応対品質そのものを高めること自体が目的ではなく、応対品質を高めることによって顧客満足度を向上させることを目的として行われているはずです。
そのため「お客さまに満足してもらう」という目的に立ったとき、応対品質を高める上で重要になるのは、いわゆる接客の質をどう設計するかという点です。
電話というチャネルで接客を行う場合、お客さまは「すぐに電話に出てくれるだろう」「出たオペレーターは正しく、素早く回答してくれるに違いない」「問題を解決してくれるのが当然だ」といった事前期待を持っています。
その事前期待を正しく理解し、それにマッチした接客を提供することが、応対品質には不可欠だと考えています。
━━━今のお話を伺って改めて思いましたが、いち消費者として見ても、ユーザー側がコンタクトセンターに寄せている期待値は非常に高いですね。
そうですね。高いと言えば高いですが、「当たり前」と言われれば当たり前とも言えます。
電話をかけてくる方々が共通して持っている事前期待としては、例えば「電話をかけたら繋がる」という点があります。これは接客というよりも、どちらかというと業務品質の領域だと思います。
それも含めて応対品質として語ることもできますが、今回は応対品質・成果品質・業務品質を分けて考えているので、「電話が繋がる」という点については、システムや人員配置の問題として業務品質に分類しています。
━━━なるほど、丁寧であれば良いというわけでもないのですね。
はい。逆に、高級ブランドや老舗感を売りにしているような企業の窓口で、「あ、わかりました。」と、淡々とした話し方をされると、それもまた違和感がありますよね。
━━━私は今、「何か基準を設けるのか」という一つの軸で捉えようとしましたが、そもそもコンタクトセンターで取り扱う商品やブランドに応じて、尺度となる要素が変わってくるということですね。コンタクトセンター、ひいてはサービスやブランドによって、その基準自体が異なる。
実践!この時、どう応対する?
━━━私は2年前に、下記のようなことがあり、コンタクトセンターへ問い合わせをしたことがあります。
商材
給湯器(オール電化の部屋に備つき済み)
発生している事象
正月(長期休暇期間)に自宅の給湯器が故障し、お湯が使えない状態になった。
発生タイミング・環境条件
年始で業者や修理対応がすぐに動けるか分からない時期である。
顧客の心理状態
生活インフラが止まり、不安を感じている状態。
緊急度・切迫感
日常生活(入浴・洗面等)に直結するため、心理的な緊急度は高い。
顧客が取った行動
給湯器本体に記載されていたメーカーの問い合わせ番号に電話をかけた。
接点の前提条件
つながったのはメーカーのコンタクトセンターで、オペレーターによる電話対応。
今回の問いの前提
メーカー側のKPI・制約・内部事情は一旦考慮せず、共有されている情報のみを前提にした場合の応対を問うている。
━━━関口さんならどう応対されますか?
そうですね。おそらく、その給湯器メーカーの窓口には、トラブルで困っている方からの電話が多くかかってくると想像します。
つまり、電話をかけてくる方の多くは、「できるだけ早く繋がってほしい」「繋がったら何とかしてほしい」という事前期待を持っていると思います。
その場合、まずは困っている、焦っているという気持ちに、全力で寄り添うことが重要です。
しかも真冬の年始という状況であれば、なおさら大変な思いをされているはずですから、「大変でしたね」「お困りの中、ご連絡いただきありがとうございます」といった配慮を示しつつ、「すぐに状況を確認させてください」と伝え、迅速に対応する、という流れになると思います。
━━━なるほど。私は困っているので、とにかくどうすればいいのかを聞いていると思いますが、そこでいきなり答えを出すのではなく、まず配慮する姿勢を示さなければ、解決に進まないということですか。
そうですね。解決に進みにくくなります。
まずお客さまの気持ちに寄り添い、「お困りですよね。あなたが困っていることを、オペレーターである私はきちんと理解しています」と受け止めて返すこと。それが、おもてなしの心だと思っています。
━━━面白いですね。では次に、下記のようなシチュエーションはいかがでしょう。
商材
法人用クレジットカード
発生している事象
法人名義で申し込んだクレジットカードが手元には届いているが、なぜか利用できない状態になっている。
顧客の現在の代替手段
デビットカードは所持しており、明日から一切支払いができなくなるわけではない。
緊急度・切迫感
今すぐ困っているわけではなく、緊急性は高くない。
潜在的な不安・制約
決済金額によってはクレジットカードが必要になる場面があり、このまま使えない状態が続くのは不安。
顧客の要望・ゴール
少なくとも数か月以内には、問題なくクレジットカードを使える状態にしておきたい。
行動
その確認と解消のためにコンタクトセンターへ電話し、担当者(関口さん)につながった。
━━━関口さんなら、どう応対されますか?
この場合、新しいカードが届いたにもかかわらず使えないという状況で、原澤さんのお気持ちは「困っている」「悩んでいる」「戸惑っている」など、さまざまな感情があると考えられます。
そこに寄り添い「新しいカードが届いたにもかかわらずお使いいただけない状況でございますね。ご不便をおかけして申し訳ございません。すぐに状況をお調べいたしますので、まずはお名前と、例えば会員番号をお伺いしてもよろしいでしょうか」といった形で進めていきます。
シチュエーション別の応対方法
━━━私の理解不足かもしれませんが、今のクレジットカードの例と、先ほどの給湯器の例との違いは何でしょうか?
今回の二つの例は、企業のブランドイメージや方向性が同じケースとしてお話ししています。「困っている方にとにかく寄り添う」ということがセンターの品質ポリシーであれば、応対は同じになります。
ただし、「お客様への寄り添い」よりも「解決重視」「スピーディーな対応」を優先する品質ポリシーの場合、この寄り添いのプロセスは不要になります。
例えば、「お湯が出なくて困っている」と言われた場合に、「かしこまりました。すぐにお調べします。いつからですか。今は何度くらいのお湯が出ていますか。」といったように、質問を重ねて状況整理を先に行います。
カード会社の場合も同様で、お客様に寄り添うことよりも、一分一秒でも早く使えない状況を改善する、あるいは即時解決が難しければ代替案を提案するというポリシーであれば、「かしこまりました。すぐにお調べします。お名前、会員番号、いつ届いた何色のカードでしょうか」といった進め方になります。
━━━もう一問よろしいでしょうか。
商材
健康食品・サプリメント
これまでの整理(前提)
給湯器の故障は「緊急度・重要度ともに高いケース」、クレジットカードは「緊急度は低いが重要度は高いケース」と整理できる。
コンタクトセンターの基本原則
原則として、重要度・緊急度が高い案件を優先的に対応する。
これまでの事例の共通点
いずれも顧客側から問い合わせが発生する「インバウンドコール」であった。
今回の前提となる業態・役割
食品系企業におけるサプリメント商品の「アウトバウンド」を行うコンタクトセンターを、関口さんが管轄している。
接点の発生条件
企業側から顧客に電話をかけるアウトバウンドコールである。
顧客属性
横浜在住、65歳男性(質問者の父)。連絡先は自宅の固定電話。
顧客側の状況
本人は事前に問い合わせや資料請求をしているとは限らず、突然かかってきた営業・案内の電話として受電する可能性がある。
今回の問いの本質
緊急性も重要度も顧客側では必ずしも高くない状況で、アウトバウンドとして接触した際、どのような姿勢・切り口・距離感で応対すべきかを問うている。
━━━この場合、関口さんならどう応対されますか?
これはサプリメントの種類によります。
体のどこかに不調があり、それを少しでも緩和するためのサプリメントなのかどうかによって変わってきます。
例えば、膝の関節に効くサプリメントであれば、今ある痛みを和らげたいというニーズになります。一方、ビタミン剤などの場合は、今よりもさらに良い状態にしたい、あるいは現状を維持したい、年齢とともに低下していくものを少しでも緩やかにしたい、といったニーズになります。
そのため、セールスの仕方も自然と変わってきます。
━━━そもそも、私が挙げたお題の段階では、コンタクトセンターの設計に関する意思決定がまだできていないということですね。サプリメントであれば、どういったタイプのサプリメントなのか。前半の二つの例であれば、どのようなポリシーを掲げていくのか。そうした点をWOWOWコミュニケーションズとお客さまとで話し合い、方向性を決めたうえで、具体的なスクリプトに落とし込んでいく、という流れになるわけですね。
まとめ:応対品質で欠かせない要素とは?
応対品質の本質は「満足度を高めるための設計」にある
応対品質は丁寧さや話し方の良し悪しではなく、顧客満足度を高めるために接客をどう設計するかの問題である。顧客が電話をかける時点で持っている「すぐ繋がる」「正しく答えてくれる」「解決してくれる」という事前期待を理解し、それに合致した応対を提供することが品質の前提となる。
応対の正解は、商品・状況・ポリシーによって変わる
給湯器の故障のように緊急度が高いケースでは、まず不安や焦りに寄り添う姿勢が不可欠である。一方で、解決スピードを最優先する品質ポリシーの場合は、共感よりも状況把握と即時対応を重視した応対が合理的となる。「丁寧であること」自体が常に最適解とは限らない。
シチュエーション別応対は、設計思想がなければ成立しない
インバウンドかアウトバウンドか、緊急度・重要度が高いか低いか、顧客のニーズが「不安の解消」か「状態の改善」かによって、適切な距離感や切り口は異なる。そのため、応対スクリプトは現場判断に委ねるのではなく、企業・ブランドの方針を明確にした上で設計する必要がある。
一言まとめ
応対品質とは現場の話術ではなく、顧客の期待と企業のポリシーをすり合わせて設計する「戦略的な品質設計」である。
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