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コンタクトセンター

#1 なぜ、コンタクトセンターのDX推進に取り組んだのか?

更新日:
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【要約】人手不足とセキュリティの壁を越える、コンタクトセンターDXの意思決定プロセス

コンタクトセンターDXに取り組んだ背景と直面した課題
コンタクトセンターのDX推進に取り組んだ背景には、入電数の繁閑差による人員配置の難しさや、人手不足・採用難といった業界全体の課題がありました。電話対応を前提とした運用ではコストと負荷が増大するため、Web誘導や自動化によって入電を分散・平準化し、持続可能な運用体制を構築する必要性が高まっていました。

DX推進のきっかけと現場で起きていたこと
DXが進みにくかった最大の要因は、万全なセキュリティ体制ゆえの慎重な意思決定と、プロジェクトメンバー間でのAIやクラウドに関する知識のばらつきでした。新技術の理解度が揃わないことで議論や承認に時間を要し、結果として導入判断が遅れる場面も多く、DX推進の難しさにつながっていました。

コンタクトセンターDX推進までの経緯
DX推進の判断軸として重視していたのは、コスト削減だけでなくCX(顧客体験)とのバランスです。人が対応している業務をAIに置き換え、効果が見込める領域に絞って投資を行うことで納得感のある意思決定を行ってきました。加えて「AIを活用すべき」という社会的な潮流が後押しとなり、具体的な活用イメージの共有が突破口となりました。

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現場の課題から紐解く、コンタクトセンターDX推進の背景

様々な企業のコンタクトセンターを運用しているWOWOWコミュニケーションズ。

近年の「コンタクトセンターのDX化」について、20年以上の業務経験を持つ宮里氏に話を聞いた。

「このご時世で『やはりAIを活用しなければいけないよね』という思いは共通して持っていましたので、AIを使うことで見える世界は常に共有していました。」

今や毎日のようにニュースで取り上げられる「AI」。その波は当然ながら、コンタクトセンターの現場にも押し寄せています。

このような中、一体、現場ではどのような進化と苦労があるのか?

DXに至るまでの背景、直面した課題、意思決定のプロセス、実際の改善施策、そして宮里氏が向き合ってきた「DXの本質」について、推進の中心に立つ宮里氏に話を聞きました。

※本連載では「コンタクトセンターへDXを実装したプロセス」を合同会社HARAFUJIの原澤が紐解いていきます。

スピーカー

宮里 涼子

2003年にWOWOWコミュニケーションズへ入社。カスタマーセンターの運用やマネジメントを経験、主に解約顧客の声を分析するモニタリングセンターの立ち上げを経験。現在はデジタル領域・コール領域の運営コンサルティングに加え、AI・DX推進担当として、WOWOWやグループ外のお客様へAI・DXの施策企画を提案、推進中。

インタビュアー

原澤 耀

合同会社HARAFUJI Co-Founder COO | 大学在学中の19歳より株式会社ギャプライズにてBtoCデジタルマーケティング、BtoBマーケティング、法人営業に従事。その後、チーターデジタル株式会社にて法人営業を経て、 現在は合同会社HARAFUJIの共同創業者として独立。BtoBマーケティングを中心とした戦略および戦術支援事業に従事している。詳しくはこちら

なぜ、コンタクトセンターのDX推進に取り組んだのか?

━━━宮里さんは現在、「コンタクトセンターDX化」プロジェクトに取り組まれていると伺いました。そもそもなぜ、コンタクトセンターのDX推進に取り組み始めたのでしょうか?

きっかけは、電話の繁閑差が大きく、Webへ誘導したいという課題があったことです。

ビジネスモデルや商材によっては時期によって入電数に波があり、必要な人員数が異なります。入電数が多い時期に合わせて人員を配置すると、入電が少ないタイミングでは人が余剰してしまう。

そこで人員を過度に配置せず、急増したタイミングだけWebへ誘導することで、電話対応の波を平準化したいというのが一つの狙いでした。

また「そろそろ、DXやAIに取り組まなければまずい」という危機感も大きな理由です。

━━━1点目の「時期による必要人員数の違い」について伺います。入電量が増える時期をWebに誘導するという点についてですが「お問い合わせが集中するタイミングを均す」のが狙いでしょうか?

最初の動機としては、まさにそれです。

そこから「人が対応しなくてもよい業務は自動化する」「入電の分散のためにコール予約やSMS送付を行う」といった取り組みに広げていきました。

これまでのようにただ一方的に受けるだけではなく、電話自動応答サービスで「現在電話が混み合っているため、ご希望の時間帯に折り返しのお電話をします」というメッセージからSMSへ誘導する。または、Webで解決できる方にはWebで完結できる仕組みを整えたりする対応です。

このような仕組みに取り組む背景として、コンタクトセンター業界全体が抱えている人手不足・採用難という大きな課題があり、これは弊社でも同様に直面しています。

企業側としても人件費を一定のラインで抑えつつ、WebやDX・AIで対応できる部分は積極的に置き換えていかなければ、利益面でも厳しいという背景もあります。

━━━なるほど。DXの背景には、採用の課題もあるんですね。

DXが進みにくい背景

━━━冒頭の2点目「そろそろ、DXやAIに取り組まなければまずいという危機感」についても伺います。そもそも、なぜ、DXに着手できなかったのでしょうか?私は以前、ソフトウェア営業として多くの企業を見てきましたが、2025年になってもDXが進まない企業は少なくありません。どのようなハードルや障壁があり、DXが進まなかったのでしょうか?

色々ありますが、一番はセキュリティ面です。

大前提、弊社では万全なセキュリティ体制を取っています。これは、お客さまが安心してサービスをご利用頂くために必要なことです。

ただ、何事も二面性があります。セキュリティが万全ということは、その分、新しいテクノロジーの導入は慎重にならざるを得ません。良し悪しではなく、仕組み上の事実です。

そのため、DXに携わる施策においてリスク評価や試算に一定の時間がかかったり、そもそも導入ができなかったりします。

故に、セキュリティが万全だからこその課題もあります。

━━━前提、セキュリティがしっかりされていることは素晴らしいですね。とは言え、DXを進めなければなりません。セキュリティを鑑みながらDXを進める中で、苦労されたことは何でしょうか?

現場で感じてきた大きな課題の一つは、プロジェクトメンバー毎で異なる“知識のばらつき”です。

例えば、AIに関するリテラシーは人によって差が大きく、新しい概念や仕組みが急速に増える中で、理解のスタートラインが揃わない場面が多くあります。

他にも、クラウドの構造やデータの扱いなど、一定の理解が必要な項目が多いため、プロジェクトメンバー内で慎重に進行せざるを得ないこともあります。

その結果、意思決定に時間がかかる…ということはありました。

ただ、その過程で知識が蓄積され、徐々にスムーズに進むようになるという良い側面もあります。

総じて、AIを含むテクノロジーに対するメンバー毎の“知識のばらつき”は、DX推進の難しさにつながっているのではないでしょうか。

━━━たしかに、誰であれ「初めましての情報」への解釈は、前提知識で意思決定が異なりますね。他に、苦労された点はありますか?

最終的なテクノロジー導入へのセキュリティ承認も、プロジェクトメンバー全員で苦労した点です。

これは社内メンバーだけでなく、テクノロジーを販売されてるベンダー側とのコミュニケーション・連携も重要です。

さきほどの知識の話に繋がりますが、テクニカルで高度な説明も必要ですし、一方、テクノロジーに詳しくない方向けへの仕組み・リスク・メリット・デメリットなどの説明も必要です。

仕事として当たり前ではありますが「目の前の人に適した説明」は、苦労というより、徹底した、という認識です。

━━━色々苦労された中で「今思えば、DXの突破口はこれだった」と感じるものはありますか?

社会の潮流、いわゆる“ご時世”が、突破口だったかもしれません。

━━━どういうことでしょうか?

現在の社会の潮流的にも「やはりAIを活用しなければいけないよね」という思いは共通して持っていましたので、AIを使うことで見える世界は常に共有していました。

例えば、ボイスボットを導入する際は、導入すると具体的に何ができるのか、という点をメンバーと何度も打ち合わせを行い、抽象的な話ではなく、具体的に「コンタクトリーズンの振り分けをどのように行うか、AIボイスボットによる回答、その結果、顧客体験としてお客さまの受けるメリット、コンタクトセンター側のメリットはこうなる」というイメージを示し、関係者に共有をしました。

このような入念な事前の準備があり、そこに“ご時世”が後押ししてくれて、「ではやってみようか!」という流れになりましたね。

DXの費用に関する捉え方

━━━いざDXを進める時、費用感は誰しも気になるところです。その中で「必要・不要」の判断はどのようにされてましたか?

これについてはさまざまな考え方があると思いますが、例えば、人が対応していることで発生しているコストをAIが代替することで下げていきたい、という目的、「コスト削減」を軸に判断する場合、営業時間外にAIを稼働させて自動受付を行う必要はありません。「お客さまが時間を気にせず手続きできればCX向上につながりますよね」という意見もあると思いますが、それによって営業時間内の人の応答が減るわけではありません。

つまり、コスト削減にはならないため、やる必要がないんです。

営業時間内で人が対応している部分をAIに置き換えることで、コストが下がるのであれば、これは必要な費用となります。

━━━ 興味深いですね。意思決定する際には何らかの価値観やルール、目的といった判断軸があると思います。必要・不要を判断する際の起点となるものは何でしょうか。

あくまで私個人として、また、コンタクトセンターという領域という前提の考えとして「CX」が、意思決定の要素としてあります。

私は長きに渡りコンタクトセンター領域に携わってきたので「お客さまあってのコンタクトセンター」だと思っていますし、CX向上は必要だと考えています。

しかし、予算が無限大にあるわけではないので「何をもってCXか?」は、議論が必要です。どこがCXの最低ラインか、どこまでやるとやりすぎか…このあたりはいまなお、議論を進めていますし、永遠の議題ではないでしょうか。

━━━なるほど…物事には二面性があり、必ずしも是々非々で判断できるわけではないと思いますが、悩ましいところですね。伺っていると、DXの意思決定はテクノロジーという合理的な領域の話のように見えて、実は人間のスタンスの問題という一面もありますね。

まとめ:現場の課題から見たコンタクトセンターDX

現場から見えてきたコンタクトセンターDXの課題
入電の繁閑差が大きく、人員配置の最適化が難しいことや、人手不足・採用難といった構造的な課題を背景に、電話対応に依存しない運用体制への転換が求められていた。

DXを進めるうえで直面した判断の難しさ
万全なセキュリティ体制ゆえに新技術の導入判断が慎重になり、加えてAIやクラウドに関する知識のばらつきが、DX推進のスピードを鈍らせる要因となっていた。

コンタクトセンターDXを「現実的に」進めるための考え方
CXとコストのバランスを判断軸とし、人が対応している業務をAIで代替できる領域に絞って検討を進めたこと、またAI活用が社会的に受け入れられ始めた流れが後押しとなった。

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この記事を書いた人

猪越 みなみ

2023年WOWOWコミュニケーションズ入社。 過去カスタマーサポート、BPO業務のソリューションセールスに従事。 現在は、営業の経験を活かし、BtoBマーケティング領域の営業企画を担当。

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