#1 品質の高いコンタクトセンターとは?
要約
三要素のバランスこそ品質を決める
応対品質・成果品質・業務品質の三つはどれか一つでも欠けると品質が歪み、満足度や効率に悪影響が出る。応対だけ良くても成果が伴わず、成果だけ重視すると押し売り化し、応対に偏ると非効率になる。三つが均衡して初めて高品質なコンタクトセンターが成立する。
三要素に至った25年の経験と思考
業界全体が丁寧さ重視だった時代、応対だけでは独りよがりになり得ることを現場で痛感。一方で業務指標や成果は元々重要であり、商材によって比重も異なる。偏りが生むリスクを長年見てきた結果、三要素を均等に捉える枠組みに至った。
“歪み”は事前期待のズレから生まれる
丁寧すぎても淡泊すぎても違和感が生まれる背景には、お客様の事前期待とのズレがある。期待値の高い企業ではその基準で評価され、逆に安価・迅速を売りにした店で高級店の接客をされても違和感が生じる。WOWOWコミュニケーションズはこの期待値を正確に捉えて設計・運営している。
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コンタクトセンターの品質を支える3要素とは?
コンタクトセンターでは、応対品質・成果品質・業務品質のどれか一つに偏るとすぐに“歪み”が生まれ、顧客満足も運営品質も安定しません。
本連載ではコンタクトセンター25年以上の経験を持つ関口氏に、合同会社HARAFUJIの原澤が「品質の高いコンタクトセンターとは何か?」をテーマにポッドキャストにてインタビューを実施。
今回は中核である「3つの要素」についてご紹介します。
ポイントは「事前期待」の把握
━━━応対品質・成果品質・業務品質という三つの要素があり、それらが重なった中心に人材が位置するという枠組みを前提に、なぜこの三要素が組み合わさることで“品質の高いコンタクトセンター”が実現するのでしょうか?
これは「一つだけでも良いのではないか」「三つのうち二つだけでも成り立つのではないか」という意見も当然あると思いますが、私は三つのうちどれが欠けてもダメだと言い切りたいと思っています。
例えば、業務品質だけが高くても、応対品質、つまり接客の品質が低ければ、お客様は満足しません。逆に、成果ばかりが高い──受注率が高い、獲得率が高いといったことは企業にとっては非常に良いことかもしれませんが、そこで働くオペレーターの方にとっては厳しいノルマが課され、成果を追うあまり一回一回のお客様との接点が機械的になり、押し売りのようになってしまう。それもまた良くありません。
また、応対品質、接客品質に力を入れること自体は悪いことではありませんが、やり過ぎてしまうと一回の接客が必要以上に長くなったり、余計な応対が増えてしまったりして、結果的に効率が悪くなることがあります。
この三つのバランスが非常に大切だと考えています。
━━━関口さんが“応対・成果・業務”の三要素こそがコンタクトセンターの品質を形づくると定義するようになったのは、どのような経験や思考のプロセスが背景にあるのでしょうか?
私の二十五年を遡る話になってしまいますが、私がこの業界に入った当初は、応対品質や接客が特に重視されていた時代でした。“接遇”という、ホテルのような質の高い場での「おもてなしの心」が流行していた時代です。しかし、いくらお客様に丁寧に応対しても、ありがた迷惑のようになってしまう場面もあり、それだけではだめだという風潮が業界全体にもありました。私自身も現場を担当しながら見ていて、応対品質だけでは一人よがり、押し付けの接客になりかねず、それは良くないという思いがありました。
一方で、コールセンターを運営するうえで必要な業務品質というものは昔から当然あるものでした。例えば、電話を百本かけたら何本つながるかという応答率や、お客様の電話が何分以内にオペレーターにつながらなければならないといった数字目標があり、それを追う必要がありました。
さらに、扱う商材によっては獲得率や受注率といった成果を求められるセンターもあります。そうなると、この三つの要素はどれか一つが大きすぎてもだめで、バランスの良い三つの円でなければいけないのではないかと感じるようになりました。
どれか一つだけが大きすぎたり、小さすぎたりすると、リスクも大きいですし、歪んだ品質のものが生まれてしまう可能性もあります。
━━━なるほど。お客様からすれば、応対が丁寧すぎるとスムーズに目的にたどり着けないかもしれませんし、逆に淡々としすぎていて目的は果たせても、電話を切ったときに味気なさを感じることもある。バランスが非常に大切だということでしょうか?
そうですね。特にコンタクトセンターというのは、顔の見えないサービス業のようなところがあります。
対面であれば多少の“歪み”は流せても、接客が終わったあとに残る「何か違うな」という違和感は、非対面の場合、より出やすいのではないかと思っています。
━━━今おっしゃった“歪み”という言葉が非常に興味深いので質問なのですが、「歪ませてしまったな」「歪んでいたな」と感じた経験はありますか。
色々ありますが、結論「事前期待をしっかり把握できていない」場合、歪むことがあります。
例えば、一般的に顧客満足度が高い印象のある企業がありますよね。そうした企業の場合、お客様はそのレベルの品質だろうという前提で接してきます。
三つ星レストランに行けば、料理だけでなく、接客や店員の所作一つひとつに対しても、三つ星なのに五つ星並みの期待をしてしまう。
しかし、その期待が満たされなければやはり歪みが生まれますし、その一方で「早い・うまい・安い」が売りのお店で三つ星レストランのクオリティを提供されても、そこでも歪み、つまり気持ち悪さが生まれてしまうのです。
━━━関口さん、そしてひいてはWOWOWコミュニケーションズとしては、最終的に、御社のお客様である企業の商品のこともそうですし、その商品を利用している消費者、つまりクライアントのお客様がどのような気持ちでその商品・サービスを使うのかを逆算しないと難しいのではないでしょうか?
その通りです。だからこそ、WOWCOMが得意としている「お客様の事前期待をしっかりとキャッチしたうえでコンタクトセンターを設計し、その後も運営していく」という姿勢が重要になります。他社でももちろん取り組んでいることだとは思いますが、この“事前期待”という点こそ、WOWCOMが特に大切にしている部分だと思います。
まとめ
まとめ:三要素のバランスが品質をつくる
- 三要素は相互依存で成り立つ
応対品質・成果品質・業務品質のいずれかが欠けると顧客満足や運営効率に歪みが生じるため、三つの品質はセットで機能する必要がある。どれか一つを極端に高めても、結果的には全体の品質を損なう。 - 25年の経験から導かれた枠組み
業界の潮流や現場での試行錯誤を経て、応対だけ・成果だけでは成立しないことを痛感。数字管理が求められる業務品質と成果品質、顧客体験を支える応対品質をバランスさせることが必然と理解された。 - “歪み”を防ぐ鍵は事前期待の把握
顧客は企業ごとに異なる期待値を持っており、それを外すと違和感が生まれる。WOWCOMは事前期待を正確に捉えた設計・運営を重視し、三要素の過不足を防ぐことで品質を安定させている。
一言まとめ:
高品質なコンタクトセンターは、三要素のバランスと顧客の事前期待理解という“原則”を軸に、初めて成立する。
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