#11 アウトバウンドのコンタクトセンターで成果品質を高めるには?
目次
要約
セグメント戦略とリスト設計の考え方
アウトバウンドは購買意欲のない顧客へのアプローチが前提となるため、年代・性別・行動履歴などのデータをもとにリストを細分化し、獲得確度の高い層を丁寧に扱う戦略が不可欠です。
トークスクリプトとロールプレイングによる品質担保
架電前にスクリプトの順番・抑揚・切り返しパターンを習得するロールプレイングを徹底し、想定外の断りへの対応はハイパフォーマーの成功事例をボトムアップで蓄積することで組織全体の精度を高めます。
戦略の継続とチームマネジメントの重要性
戦略を立てたら折れずにやり切ることが大前提であり、成果が落ち込む局面でもチームの士気を維持するスーパーバイザーのマネジメント力が成果品質を左右します。
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概要
アウトバウンドのコンタクトセンター業務では、そもそも購買意欲のない顧客へのアプローチが前提となるため、インバウンドとは根本的に異なる戦略設計が求められます。
リストの精度・トークスクリプトの設計・切り返しパターンの習得といった要素が複雑に絡み合うため、「何から手をつければよいか分からない」と感じている担当者も少なくないのではないでしょうか。
本稿では、アウトバウンドにおける発信リストのセグメント戦略、ロールプレイングを軸とした品質担保の仕組み、そして成果を継続させるためのチームマネジメントのあり方について解説します。
データと経験則を掛け合わせた戦略立案から、現場のボトムアップによる成功パターンの蓄積まで、実務に直結する考え方を体系的に整理しています。
アウトバウンド業務の成果品質向上に課題を感じているコンタクトセンターの運営担当者・管理職の方にとって、日々の運営に役立つ実践的な示唆をご紹介します。
※前回「#10 サブスクモデルのコンタクトセンターにおけるリテンションの考え方とは?」はこちら
アウトバウンドの前提とインバウンドとの根本的な違い
━━━コンタクトセンターのアウトバウンドにおける成果品質は、どのように高めればよいのでしょうか?
アウトバウンドでの獲得は、そもそもお客様に購買意欲がない可能性が高いという点が前提となります。そのため、最終的に目指すゴールはインバウンドと同様であっても、アプローチの方法は大きく異なります。
例えば、サプリメントを扱うコンタクトセンターの場合、インバウンドでは少なくとも一定の関心を持った方からの問い合わせがほとんどです。
一方、アウトバウンドでは、過去に購買経験があり一定の購買意欲が見込める方へのアプローチと、純粋な新規顧客に対してゼロベースでアプローチする場合とがあり、それぞれで設計はまったく異なります。
━━━ゼロベースのお客様へのアプローチとは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか?
商品名を知っているものの購買意欲があるかどうか分からない方も含まれます。
現在では、電話帳への無作為架電とは異なり、発信リストを活用するのが一般的です。このリストは、お客さまが何らかの商品購入時に個人情報の提供・利用に同意したことによって作成されたものです。
ただし、その同意は必ずしもそのサプリメントの購入を目的としたものではありません。
したがって、リストに含まれていても、その商品に興味があるのか、認知しているのかすら分からない状態——これがゼロベースの新規顧客という位置づけです。
セグメント戦略とリスト設計の考え方
━━━興味があるかどうかも分からない見込み顧客に対して、どのように進めていくのでしょうか?
まずは、年代・性別・ライフスタイル・購入履歴などのデータをもとに、獲得確度——すなわち受注の可能性が高い群と低い群にリストを細分化していく必要があります。
━━━その区分方法は、経験則に基づく部分が大きいのでしょうか?
基本的には経験則に基づく部分が大きいといえます。
まずは年代と性別で分け、さらに固定電話か携帯電話か、住所情報があれば地域別にも分類します。例えば一万件の発信リストがある場合、その一万件をどのようにセグメントすれば最適な発信計画になるか、という戦略を立てることが最初の入口となります。
━━━具体的に、商材によってセグメントの考え方はどのように変わるのでしょうか。
サプリメントの場合、元気ハツラツ系なのかお悩み解消系なのかによっても分け方は変わります。
元気ハツラツ系であれば、40代後半から50代程度のまだ現役で活動している層をコアターゲットと想定します。
この層に関しては、電話に出やすい時間帯や曜日を分析し、その時間帯に合わせて発信するといった戦略を立てます。同じ番号へ何度も架電することでお客様に不快感を与えてしまうため、社内では「リストを汚したくない」という表現をすることもあります。いかに限られた発信数で成果を上げるかが重要です。
一方、お悩み解消系——例えば関節の痛みに関するサプリメントであれば、60代から80代程度のアクティブシニア層をコア層として想定します。
日中の在宅率が高いと考えられるため昼間の時間帯を中心に発信計画を立て、さらに早い時間に就寝される方を考慮し、15時から16時頃の時間帯が接触しやすいという仮説を立てたうえで計画を策定します。
━━━その思考プロセスには、フレームワークと経験則のどちらが働いているのでしょうか。
これは個人の思考というよりも、WOWOWコミュニケーションズとしての思考に近いといえます。
サプリメント・健康食品・美容関連商品・住宅設備・WOWOWの加入勧奨といった多岐にわたるアウトバウンド業務の長年の実績データと、それを生み出してきたスーパーバイザーをはじめとするセンター運営者の経験則、その両方を基にしています。
━━━データと経験則の割合はどの程度なのでしょうか。
割合というよりも、二つの車輪が同時に回っている感覚です。
足し算ではなく、掛け算に近いイメージです。いわば長年の刑事の勘のようなものも重要ですが、それを裏付ける数字もきちんと存在している——その両方が掛け算で機能しているということだと思います。
━━━ゼロベースとワンベース(過去購入者)では、戦略上どのような違いがありますか?
計画自体は同様に戦略的に立てますが、アプローチの入り口が異なります。
ゼロベースの方には、まず商品に対して興味を持っていただくことが出発点となります。一方、ワンベースの方はすでに一度購入してくださっているため、その中に眠っている「1」を引き出すようなトーク構成やセールス設計になります。
トークスクリプトとロールプレイングによる品質担保
━━━戦略と発信計画が決まった後は、どのようなフェーズに入るのでしょうか?
ターゲットが決まった後は、そのターゲットに対してどのようなアプローチでセールスを行うかを具体化します。中心となるのはトークスクリプトです。実際の架電前にロールプレイングで練習を行います。
━━━ロールプレイングで「現場に出ても問題ない」と判断する基準はどのようなものでしょうか?
一つ目は、基本スクリプトを棒読みせず、感情を込め、抑揚をつけて分かりやすく話せるかどうかです。
二つ目は、スクリプトの順番を守って話せるかどうかです。話し方が上手でも順番を逸脱してしまう方もいますが、スクリプトの構成には理由があるため、できる限り順番を守るよう練習してもらいます。
この二点が一定水準に達した時点で実践に出てもらいます。
ただし、一度の架電でその場で購入に至るケースは多くありません。そのため、お客様からの断り文句に対して、論破するのではなく気持ちを受け止めたうえで購入判断を後押しできる切り返しができるかどうかも重要です。
━━━切り返しにもスクリプトがあるのでしょうか?
基本的なパターンは用意しています。
「今は忙しい」「家族に確認しないと分からない」「似たような商品をすでに使っている」「価格が高い」といった代表的な断り文句それぞれに対する受け答えをパターンごとに整理し、きちんと対応できる状態になってから本格的に現場に出てもらいます。
━━━想定外の理由で断られた場合は、PDCAで調整していくことになるのでしょうか?
そうですね。想定外の断りへの対応は、ハイパフォーマーの力を借りる部分になります。
各センターには、自身のコミュニケーションスキルで話を広げ受注に転換させる、いわゆるハイパフォーマーが必ず存在します。そのハイパフォーマーが生み出した新たな手法を取り入れ、成功パターンとして蓄積していくことを繰り返すことで、組織全体がアップデートされていきます。
戦略の継続とチームマネジメントの重要性
━━━総じて、アウトバウンドにおける成果品質の最も重要なポイントはどこにあるとお考えですか?
やはり戦略です。そして、戦略を立てたらそれを徹底してやり続けることが重要です。
どこかで「もう無理だ」「取れない」と折れてしまうと、アウトバウンドの場合、その負の雰囲気がオペレーター間で伝播しやすい傾向があります。立てた戦略を軸に継続することがまず重要であり、成果が落ち込む局面でも、いかにチームを盛り上げ続けられるかが鍵です。
━━━チームの雰囲気を維持することは、アウトバウンドで特に意識されていることでしょうか?
アウトバウンドは、スーパーバイザーと10名から20名程度のオペレーターでチームを組むケースが多いです。インバウンドのような100ブース規模の運営とは異なり、チームの規模が小さい分、スーパーバイザーが自分のチームをどれだけまとめ、引っ張り、盛り上げていけるかに成果が大きく左右されます。
まとめ:アウトバウンド成果品質を高める戦略と実践
ゼロベースとワンベースで設計を変える
購買意欲のない新規顧客と過去購入者では、アプローチの入り口がまったく異なります。前提を正しく捉えた設計が成果の土台となります。
データと経験則を掛け算で活かすリスト戦略
年代・性別・時間帯といったデータと長年の経験則を組み合わせ、限られた発信数でいかに獲得確度を高めるかがアウトバウンド戦略の核心です。
スクリプトとロールプレイングで品質を底上げする
基本スクリプトの習得と切り返しパターンの練習を徹底し、ハイパフォーマーの成功事例をボトムアップで蓄積することで組織全体の精度が上がります。
やり切るためのチームマネジメント
戦略を立てるだけでなく、成果が出ない局面でもチームの士気を維持し続けるスーパーバイザーのマネジメント力が、最終的な成果品質を左右します。
まとめ
アウトバウンドの成果品質は、精緻なリスト戦略・スクリプト設計・現場の成功事例の蓄積、そして折れずにやり切るチームマネジメントが一体となって初めて高まるものです。
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