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コンタクトセンター

#10 サブスクモデルのコンタクトセンターにおけるリテンションの考え方とは?

更新日:
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要約

サブスクモデルにおけるコンタクトセンターの解約抑止はどうすればいい?
解約意向はまず受け止め、理由を「金額・環境/生活変化・商品適合」などに分類して丁寧に深掘る。反論や懇願はせず、揺れる気持ちに寄り添い、価値を情報提供として提示して背中を押す。

収益とコミュニケーションのバランスをどう考えている?
解約導線を分かりにくくする等の阻止策には否定的。解約時も「おもてなし」を軸に、気持ちよく辞めてもらいつつ後悔させない情報提供を重視し、阻止ではなく価値提案として捉える。

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概要

コンタクトセンターにおける解約抑止を進めたい一方で、無理な引き留めや分かりにくい導線が顧客体験を損ねる。そんなジレンマを感じていませんか?

解約の言葉の裏には、金額だけでなく生活環境や利用実態、商品適合といった複合的な理由が潜んでいます。構造的に捉え直すことで、収益と顧客満足の両立は可能です。

本稿では、解約意向をまず受け止めたうえで理由を分類し、日割り換算などで価値を伝え直す手法や、揺れる気持ちに寄り添って「そっと背中を押す」コミュニケーションを紹介します。

また、解約阻止ではなく「価値のある提案」としてリテンションを位置づける考え方も解説します。

読み進めることで、現場で再現できるヒアリング設計と提案の軸が整理され、顧客体験を損ねずにリテンションの質を高めるための視点をご紹介します。

※前回「#9 コンタクトセンターの成果品質が上がらない…どうする?」はこちら

スピーカー

関口 早奈恵

CRM本部WOWOW事業部コンタクトセンター課 WOWCOM College 兼務 | 業界経験25年、コンタクトセンター構築・運営事業に従事。カスタマーセンター札幌拠点の運営管理者として、クライアントとの折衝や施策立案~実運用までを担当。現在は管理者育成・テクノロジー活用の推進を中心に、運用の全体的な後方支援にも注力。

インタビュアー

原澤 耀

合同会社HARAFUJI Co-Founder COO | 大学在学中の19歳より株式会社ギャプライズにてBtoCデジタルマーケティング、BtoBマーケティング、法人営業に従事。その後、チーターデジタル株式会社にて法人営業を経て、 現在は合同会社HARAFUJIの共同創業者として独立。BtoBマーケティングを中心とした戦略および戦術支援事業に従事している。詳しくはこちら

サブスクモデルにおけるコンタクトセンターの解約抑止はどうすればいい?

━━━定期購入・定期購読、あるいはサブスクリプションとも言われますが、このようなビジネスモデルにおける会員様が「辞めたい」とおっしゃった場合、成果品質の観点から、関口さんはどのようなアプローチを取られているのでしょうか?

解約リテンションという観点では、「退会したい」「解約したい」「辞めたい」というご意向について、まずは一度受け止めることが前提になります。そのうえで、なぜ辞めたいのか、その理由を確認することが必須だと考えています。

やむを得ない事情、例えば大変心苦しい話ではありますが、ご契約者様ご本人がお亡くなりになり、継続ができないというケースについては、その事実を受け止めるしかありません。

ただし、形のある商品であればご家族に引き継ぐことが可能な場合もありますので、その際は「ご家族様へ引き継ぐこともできますよ」といった、情報提供という意味でのリテンションは行います。ただ、強く引き留めるような対応は、やはり適切ではないと考えています。

それ以外の場合としては、金銭的な理由で続けられないという経済的事情や、環境的な変化、生活スタイルの変化などがあります。また、そもそも商品がご自身に合わなかったというケースもあります。味が合わない、効果を感じられない、購入したものの期待していたほど面白くなかった、といった理由です。

これらを分類したうえで、一つひとつ「どこが、どのように合わなかったのか」を丁寧にヒアリングし、それぞれに適したリテンションのコミュニケーションを取っていきます。

━━━中でも、最初にお話しされていた点も踏まえると、やはり金額面が理由になるケースは多いのではないかと感じます。例えば1,000円、2,000円、あるいは5万円といった金額も、その金額自体が高いか低いかというより、その方が何と比較しているかによって感じ方は変わると思います。仮にお客様が「この商品は高いのでやめます」とオペレーターの方に伝えた場合、どのように返答されるのでしょうか?

「高い」と感じていらっしゃることに対して、「そんなことはありませんよ」と反論することはしません。毎回お話ししている通り、まずは「金額が高いと感じられたのですね」と、一旦受け止めます。

そのうえで、その金額に見合った価値があるという点を、こちらからお伝えしていきます。

例えば、解約理由を伺った結果、「金額が高い」というお答えがあった場合には、「金額が高いとお感じだったのですね。承知しました。では、どのくらいの金額であれば続けても良いとお考えでしょうか」と尋ねます。

ただし、実際には値下げができないケースがほとんどです。

そこで、ここからがテクニックになりますが、仮に月額3,000円の商品であれば、1日あたりに換算すると約100円になります。

「1日100円でこれだけの楽しみが続けられる」「1日100円でこれだけの効果が得られる」といったように、月額3,000円という金額ではなく、より身近な単位に置き換えて、商品の強みを訴求していきます。

━━━そうした場合、お客さまの感情としてはどのような変化が起きるのでしょうか?

例えば、金額を日割りにしてご提案した際に、それが響く方もいらっしゃいます。一方で、「金額が高い」とおっしゃっているものの、実際には「忙しくて使う時間がない。その状態で3,000円を払うのは高く感じる」という方もいらっしゃいます。

━━━そうすると、環境要因なども関わってきて、実はお金そのものが理由ではない可能性もあるということですね。

その通りです。お客様は「金額」と表現されますが、詳しくお話を伺っていくと、最近仕事が忙しく、せっかく購入したものの封も開けていない。使えていないのがもったいないから辞めようかと考えている、というケースもあります。

これは金額の問題に加えて、環境要因が重なっている状態です。

━━━なるほど。私自身、少し短絡的に捉えていましたが、冒頭でおっしゃっていた金額・環境・生活、そして商品が合うか合わないかという要素は、どれか一つだけではなく、それらの掛け合わせや、それぞれの比重をどう捉えているかという可能性も含めてコミュニケーションを取られているのですね。

━━━ 一方で、解約リテンションのアプローチにおいて、これはNGだと考えている意識や考え方はありますか?

まず、続けるかどうかを最終的に判断するのは、あくまでもお客様ご自身です。そのため、「続けてください」とお願いすることはしません。

最初から「何が何でも絶対に辞める」と決めている方ばかりではなく、「本当は続けたいけれど、忙しくて使えていないのがもったいないから辞めようと思っている」という方も多くいらっしゃいます。その場合、お客様の中には「続けたい」という気持ちが残っています。

その「続けたい」と「辞めたい」の間で揺れ動いている気持ちに対して、反対したり、受け止めなかったりすると、気持ちは「辞めたい」側に傾いてしまいます。

一方で、その揺れ動いている気持ちに寄り添い、少し背中を押してあげることができれば、「もう少し続けてみようかな」という方向に気持ちが傾いていくのです。

━━━ 今の表現はとても素敵ですね。「背中を押す」というイメージなのですね。無理に「辞めないで」と引き止めに行くのではなく、あくまでそっと背中を押す。そして、押してほしくない方の背中は押さない。「続けてください」とは言わない、という姿勢だと感じました。

収益とコミュニケーションのバランスをどう考えている?

━━━気になったのは、収益バランスをどう捉えるかという点です。コロナ禍前後からサブスクリプションが一般化しましたが、解約抑止や、辞めさせないための仕組み、辞め方が分かりにくいケースが多いように感じます。例えば、退会場所が分からなかったり、大量の質問に答えさせられたり、電話解約を求められたり。経営視点では「是」とされるかもしれませんが、消費者としては嫌な気持ちになることもあります。収益とのバランスを考えたとき、この点は非常に難しいのではないかと感じるのですが、関口さんはどのようにお考えでしょうか?

解約してほしくないからといって、解約のアイコンを分かりにくくしたり、ホームページ上で多くの質問に答えなければ最終的な解約ボタンを押せないようにしたりすることについては、私自身もあまり賛成できません。

一方で、解約や退会の電話がかかってきた際に、情報提供を一切せず「分かりました」とそのまま受け付けた方がよいのではないか、という考え方があることも理解できます。

お客様が解約したいと言っている以上、何も言わずにスムーズに手続きを進めた方が、顧客満足度は上がるのではないか、という考え方ですね。

ただ、WOWOWコミュニケーションズで運営しているコンタクトセンターにおいては、やはり「おもてなし」の考え方が根底にあります。せっかくご縁があってつながったお客様ですから、解約される場合であっても、気持ちよく辞めていただきたい。ただし、解約した後に後悔はしてほしくないのです。

そのため、最後に私たちができることとして、「より良い情報を提供する」というスタンスを大切にしています。

━━━「後悔はしてほしくない」という言葉、とても良いですね。「後悔してほしくないからお伝えする」のか、「何が何でも止めてやる」というものなのかによって、言葉の選び方や語尾、細かなニュアンスにまで違いが表れてくる、という理解でよいでしょうか?

間違いなく表れますね。 特に電話は、その違いが表れやすいです。

━━━最後に、今回はリテンション編として、さまざまな考え方やテクニックを伺ってきましたが、この回でぜひお伝えしておきたいこと、あるいは「これは皆さまに後悔してほしくない」という情報があればお願いします。

先ほどのお話とも少し重なりますが、リテンションは解約抑止や解約阻止ではなく、「価値のある提案をする行為」だと捉えていただいた方がよいと思います。

もちろん、コンタクトセンターの現場でそれを推進していくスーパーバイザーの方々にその意識がなければ、最前線で対応するオペレーターの方々にもその意識は伝わりません。

仮にスーパーバイザーが「解約を阻止してやる」という意識でいれば、現場のメンバーも同じ方向に引っ張られてしまいます。その点は、ぜひお伝えしておきたいです。

━━━ 方法論については、生成AIが登場した今、AIに聞けば何百通りもの案が出てくる時代だと思いますし、その中のどれが当たるかは分かりません。時代性もあると思います。ただ、やはり「後悔してほしくない」という思い、ひいては「価値のある提案をすることがリテンションである」という点が本質なのだと感じました。次回は、アウトバウンドにおける成果品質が低い場合について伺っていきたいと思います。 本日も関口さん、ありがとうございました。

まとめ:サブスクモデルにおける解約リテンションの考え方と実践ポイント

まず受け止めて理由を分類
解約意向は反論せず受け止め、金額・環境/生活・商品適合などの真因を丁寧に掘り下げる。

価値を“身近な単位”で再提示
値下げができない場合でも、日割り換算などで価値を再構成し、納得の材料として情報提供する。

阻止ではなく「背中を押す」
「続けてください」とお願いせず、揺れる気持ちに寄り添い、後悔させない提案としてリテンションを行う。

リテンションは解約阻止ではなく、顧客が納得して判断できるよう価値ある提案を届ける行為であり、その意識がスーパーバイザーから現場へ伝播することが成果品質を左右する。

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この記事を書いた人

猪越 みなみ

2023年WOWOWコミュニケーションズ入社。 過去カスタマーサポート、BPO業務のソリューションセールスに従事。 現在は、営業の経験を活かし、BtoBマーケティング領域の営業企画を担当。

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