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コールセンターのSVにおけるクレーム応対のポイント

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【要約】実体験に近い学びを得る仕組みを継続的に運用すること

SVの2次対応は現場の要
クレーム対応が1次で収まらない場合、SVが2次対応を担うことで、顧客の不満解消と現場の信頼確保が求められます。SVが真摯に応対する姿勢は、単なる対応以上に、オペレーターの心理的安全性やセンター全体の信頼感につながる重要な要素となります。

「逃げない姿勢」が現場の安心をつくる
SVがクレーム対応に対して後ろ向きな姿勢だと、オペレーターは「助けを求めても無駄」と感じ、離職の原因にもなります。逆に、たとえ完璧な応対でなくても、しっかり受け止める姿勢を見せることで、「この職場は信頼できる」という安心感を生み出すことができます。

経験は積むもの、学ぶもの
SVとしての対応力は、単なる場数だけでなく、他者の経験を吸収することでも高められます。ロールプレイングや事例共有を通じて、実体験に近い学びを得る仕組みを継続的に運用することで、経験不足を補いながらチーム全体のクレーム対応力を底上げできます。

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コールセンターのSVにおけるクレーム応対のポイント

クレーム対応で、現場のオペレーターが「ちょっと不安…」と感じる場面は少なくありません。そんな時に頼りになるのが、スーパーバイザー(SV)の存在です。

SVの一言や対応ひとつで、現場の安心感も、対応の結果も大きく変わります。とはいえ、SV自身もクレーム対応に戸惑うことはあるもの。

本稿では、SVが現場で果たすべき役割や、2次対応力を高めるための実践的な方法を紹介します。

スピーカー

富樫 雄太

SNSマーケティング会社、研修会社などを経て、2016年に(株)WOWOWコミュニケーションズへ入社。部門のマネジメントに当たる傍ら、クライアント企業の品質改善のコンサルティング/人材育成/品質調査/フィードバック等を担当。

インタビュアー

原澤 耀

合同会社HARAFUJI Co-Founder COO | 大学在学中の19歳より株式会社ギャプライズにてBtoCデジタルマーケティング、BtoBマーケティング、法人営業に従事。その後、チーターデジタル株式会社にて法人営業を経て、 現在は合同会社HARAFUJIの共同創業者として独立。BtoBマーケティングを中心とした戦略および戦術支援事業に従事している。詳しくはこちら

クレーム応対におけるスーパーバイザー(SV)の役割

━━━コールセンターの現場においてクレームが発生した際、スーパーバイザーはどのような役割を担う必要があるのでしょうか?

さまざまな役割があると思いますが、一つ大きな役割としては、オペレーターがクレーム対応をうまく収められなかった場合の「フォロー」、すなわち2次対応を行うという点が挙げられます。

━━━理想論にはなりますが、できることなら1次対応でクレームが収まるのがベストです。それでも2次対応まで発展してしまうのは、どういった理由があるのでしょうか?

理由はさまざまです。

たとえば、オペレーターの対応に問題があったケースです。不適切な言葉遣いや態度によりお客さまを刺激してしまい、その結果、対応が困難になることがあります。

また、お客さまから「責任者に代わってほしい」といったご要望があった場合には、オペレーターが交代せざるを得ないケースもあります。

さらに、お客さまの怒りや不満がなかなか収まらず、結果としてエスカレーションされてくるケースもあります。

━━━「上の者に代われ」といったケースについては、お客さまの意向によるもので、ある種やむを得ない部分もありますね。

そうですね。お客さまが「責任者に代われ」とおっしゃる理由は本当にさまざまで、オペレーター側に非がある場合ももちろんあります。

一方で、オペレーターや企業側に特段の落ち度がなくても、お客さまが何らかの誤解をされていたり、「あなたでは話が進まない」といった理由から、交代を求められることもあります。

このように、2次対応が発生する背景は千差万別です。

2次対応がうまくいかなかった場合

━━━仮にクレームがエスカレーションされ、SVが2次対応にあたった際、もしその2次対応がうまくいかなかった場合、現場にはどのような問題や影響が生じるのでしょうか?

「うまく対応できなかった」という状況が具体的にどういう状態かにもよりますが、たとえばSVや、場合によってはリーダーが2次対応を行ったにもかかわらず、それでもクレームが収まらなかった場合には、いくつかのパターンが考えられます。

一つは、お客さまに強い感情的要因がある場合で、そもそも誰が対応しても収めるのが難しいケースです。

もう一つは、2次対応を行ったSV自身の応対に問題があり、結果としてお客さまの不満が解消されなかった場合です。

後者のような場合、次の段階としてはセンター長など、いわゆる3次対応者に引き継がれる可能性があります。

ただし、仮に2次対応でもうまく解決できなかったとしても、SVが逃げずに真摯に対応する姿勢を見せていれば、それを現場のオペレーターたちは必ず見ています。

「この人はしっかり対応してくれる」「自分がクレームを受けたときも、このセンターの管理者はちゃんとフォローしてくれる」といった信頼や安心感が、現場全体に広がることがあります。

━━━たしかに、以前クレーム対応と離職率の関係についてお話を伺った際、「フォローがなかった」「環境が整っていなかった」といったことが離職理由になるという話がありました。

━━━コールセンターの現場において、クレーム応対が原因で離職してしまうケースは多いのでしょうか?

よくあることだと思います。各種調査でも、離職理由の一つとして「クレーム対応」が挙げられるケースは多いようです。

クレームそのものが原因になることもありますが、実際には「クレーム対応をしている中で、周囲のサポートがなかった」「助けを求めたのに対応してもらえなかった」といった“環境”や“サポートの不在”が離職の引き金になっていることも多いです。

安心して働けない職場では、どうしても人は定着しません。クレームをゼロにすることはできませんが、大事なのは「クレームが発生したときに、どうサポートするか」という組織の姿勢や体制のあり方です。

引用元:コールセンターのクレーム応対において離職率増加に繋がる“本当”の理由

━━━やはり、現場の方々はSVやリーダーのアクションを見ているということなんですね。

おっしゃるとおりです。手を挙げたときにきちんと対応してもらえる、というのは現場にとって非常に重要な安心材料です。

ところが中には、オペレーターが手を挙げているにもかかわらず、対応してもらえなかったり、「あなたの判断で対応してください」といった形で現場にボールを返してしまうようなケースもあると聞いています。

そうなると、現場のスタッフにとっては、「ここでは助けてもらえない」「自分で何とかしなければならないのか」といった不安や不満につながり、結果としてセンター全体の雰囲気や士気に悪影響を与える可能性があります。

やはり、適切なフォローがあるかどうかは、現場にとって非常に大きな意味を持つと思います。

━━━今の「手を上げても助けてもらえない」という状況についてですが、これは仕組み上の問題なのか、それとも個別の人に起因する問題なのか。もちろんケースバイケースだとは思いますが、なぜそのような状況が生まれてしまうのでしょうか?

どちらの要因もあるかと思いますが、過去の事例などを見ていると、たとえば「クレームの2次対応をしたくない」「極力関わりたくない」といったマインドを持っているケースも一定数存在するように思います。

そうなると、オペレーターとしては非常に困ってしまいます。助けを求めても応じてもらえないというのは、現場にとって大きなストレスになります。

だからこそ、スーパーバイザーがクレームの手上げ対応に対して、しっかりと向き合い、逃げずに対応する姿勢を持つことが非常に重要だと感じます。うまく対応できるかどうかよりも、まずは「受け止める姿勢」が大前提だと思います。

スーパーバイザー(SV)向けのクレーム応対研修・トレーニング

━━━スーパーバイザーのクレーム応対力を高めるために、どのような研修やトレーニングを行うべきか伺いたいです。特に、今おっしゃった「対応したくない」というマインドを変えることや、「逃げない」という姿勢を育てること、さらに業務フローとして仕組み化していく観点も含め、どういった研修・トレーニングが考えられるでしょうか?

2次対応力を高めるための取り組みとしては、いくつかの方法があります。

たとえば、ロールプレイングの実施は非常に有効です。過去にも弊社内で行ったことがありますが、センター長が「お客さま役」を務め、各SVに対してあらかじめ設定された2次対応のシナリオを用意し、その電話応対を実践形式で行います。

その上で、どのように対応したかを確認し、適切な対応ができているかを評価・フィードバックします。

また、2次対応に関する事例共有も重要です。

センターや部署内で実際の対応事例を集めて「この応対はよかった」「ここは改善できるポイントだった」などといった形で、現場での学びを可視化し、皆で振り返る機会を設けることが効果的です。

さらに、「なぜ逃げたくなるのか」「なぜ対応したくないと思ってしまうのか」という感情の根本に対しても、研修や1on1で対話を重ねることでアプローチしていく必要があります。

単なるマニュアルの伝達ではなく、心理的なハードルに対しても寄り添いながら、「自分も乗り越えられる」と思える環境づくりが求められると思います。

━━━確かに、2点目の「実際にあった事例を振り返る」仕組みは、習慣化さえできれば現場でも運用できそうですよね。一方で、1点目のロールプレイングについてですが、ロールプレイングの成功基準や設計方法について教えてください。

ロールプレイングについては、WOWCOM Collegeがファシリテートするケースもありますし、センター現場のみで完結して行っているケースもあります。

お客さま役は、センター内でクレーム対応経験が豊富な人物が担当することが多いですね。

その上で、ある程度のシナリオと、到達すべきゴール(クリア条件)を事前に設定してから実施しています。そして、ロープレ中にSVがその条件を満たすような適切な2次対応をできているかどうかを確認する、という運用が一般的です。

━━━なるほど。クレーム応対のロープレには「型」のようなものが存在するのでしょうか?それとも毎回カスタマイズされるものなのでしょうか?

「型」というほど明文化されたテンプレートがあるかは分かりませんが、少なくとも実施にあたっては、最低限の設計ルールのようなものは存在します。

たとえば、お客さま役に関しては、ある程度の背景情報や状況設定を事前に決めておきます。そして、それをSV役には伝えずにロープレを開始します。

SV役は、設定されたお客さまの状況を、やり取りを通じて丁寧にヒアリングし、正しく把握したうえで、最適な対応ができるかどうかが問われます。

━━━では最後の質問になります。SVのクレーム応対に関して、これまでさまざまな観点で教えていただきましたが、総じて「ここがやはり重要だ」と感じる点をあらためて挙げるとすれば、どこになるでしょうか?

やはり、SVの2次対応レベルになってくると「経験」が最も重要だと思います。

経験を重ねることで、過去のケースを引き出しとして活用できるようになり、クレームが発生した際にも落ち着いて、適切な対応がしやすくなります。

ただ、そうした経験を十分に積むまでには時間がかかりますし、最初から対応力が高い人はいません。ですから、経験がまだ十分でない間は、それを補うための手段が必要になると考えています。

━━━具体的には、どのような手段があるのでしょうか?

たとえば、事例共有です。

他のSVが実際にどういったクレームに対して、どのような2次対応を行い、最終的にどうなったかという情報を、日常的に共有していくことが挙げられます。

それを通じて、自分自身の経験ではなくても、「他の人の経験を自分の引き出しに加える」ことが可能になります。

自分のこととして置き換え、あたかも自分がその対応をしたかのようなレベルで理解し、吸収することができれば、実際の経験に近い学びを得られます。

このように、事例の蓄積と共有によって、経験不足を補いながら、SVとしての対応力を育てていくことが大切だと考えています。

━━━もちろん、明日すぐに実践できるような「必殺技」があれば理想的ですが、何事も経験は時間とのトレードオフが発生します。ただ、それをただ待つのではなく、自ら進んでインプットを積み重ねていくことが、SVに求められる2次対応力を育てる上で重要ということですね。

そのインプットを増やすこと、そしてロールプレイングなどの実践を通じて経験値を補い、対応力を高めていくことは非常に有効だと思います。

━━━ありがとうございます。今回を含め、全8回にわたりクレーム応対についてさまざまなお話を聞かせていただきました。最後に、あらためてこれらの内容を言語化して振り返ってみて、どのようなご所感をお持ちですか?

そうですね、「急がば回れ」という言葉がありますが、本当にその通りだと感じました。

クレームのお電話をくださるお客さまも、当然ながら人間です。そのお電話に至るまでには、さまざまな気持ちや背景、感情があるはずです。

そういった心情を受け止め、丁寧にケアしていく姿勢こそが、クレーム応対において何より大切なのだと、今回あらためて言語化する中で強く実感しました。

まとめ:SVに求められるクレーム応対力とは

  1. SVは「2次対応」の要となる存在
    クレームがエスカレーションされた際、SVの真摯な対応が現場の信頼感と顧客満足度を左右する。
  2. 「逃げずに受け止める姿勢」が現場の安心を生む
    対応の巧拙よりも、手を挙げたオペレーターに対してしっかり向き合う姿勢が、職場全体の心理的安全性につながる。
  3. 経験と共有が対応力を育てる鍵
    ロールプレイングや事例共有を通じて、実体験だけに頼らず他者の学びを吸収することで、SVとしての対応力を効率的に高められる。

クレーム応対におけるSVの役割は「問題解決者」であると同時に、「現場の支え手」でもあります。逃げずに向き合う姿勢と、継続的な学びが、信頼されるSVを育てる鍵です。

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この記事を書いた人

猪越 みなみ

2023年WOWOWコミュニケーションズ入社。 過去カスタマーサポート、BPO業務のソリューションセールスに従事。 現在は、営業の経験を活かし、BtoBマーケティング領域の営業企画を担当。

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