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コールセンターのクレーム応対において離職率増加に繋がる“本当”の理由

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【要約】クレームそのものより「支援の不在」が離職を招く

コールセンターにおけるクレーム応対が離職率増加に繋がる“本当”の理由:
クレームそのものより「支援がないこと」が人を辞めさせる。クレーム応対のストレス自体も大きいが、離職の直接的な原因は「困っている時に誰も助けてくれなかった」という環境への絶望。組織がオペレーターの不安や負担を見過ごすことで、精神的に孤立し、結果として職場に定着しなくなるケースが多い。

管理者はオペレーターをサポートしたくないわけではない:
支援できないのは“意欲の欠如”ではなく“物理的な限界”。管理者がフォローできない背景には、単純な人手不足や業務過多がある。サポート意欲があっても時間的・人的リソースの限界で手が回らない。SVが一人増えるだけでも現場の支援力は大きく向上し、安定した運営と安心感につながるという事例もある。

離職率低下だけでなく、現場で重要なクレーム応対の仕組みとは?:
個人の技量だけでなく、全体で支える“仕組み”が不可欠。応対スキル研修だけでなく、クレームを未然に防ぐ仕組みや、管理者のマインド醸成も重要。さらに、顧客の声をサービス改善に活かすPDCAの仕組みも必要。オペレーターが「何かあっても守られる」と感じられる安心感が、離職率改善の鍵を握る。

コールセンターにおけるクレームと離職の因果

コールセンターのクレーム応対による離職は、単に応対内容のストレスが原因とは限りません。

大きな要因として「困難な状況下で適切な支援が得られなかった」という環境そのものにあります。

管理者も本来は支援したいと考えていますが、人員や業務量の制約により、十分なサポート体制を整えられないケースが多く見られます。

本稿では、離職防止に向けた管理体制の強化、現場支援のあり方、クレーム対応スキル研修の重要性についてご紹介します。

離職率を抑え、現場の安定性を高めるための実践的なヒントを得たい方におすすめの内容です。

スピーカー

富樫 雄太

SNSマーケティング会社、研修会社などを経て、2016年に(株)WOWOWコミュニケーションズへ入社。部門のマネジメントに当たる傍ら、クライアント企業の品質改善のコンサルティング/人材育成/品質調査/フィードバック等を担当。

インタビュアー

原澤 耀

合同会社HARAFUJI Co-Founder COO | 大学在学中の19歳より株式会社ギャプライズにてBtoCデジタルマーケティング、BtoBマーケティング、法人営業に従事。その後、チーターデジタル株式会社にて法人営業を経て、 現在は合同会社HARAFUJIの共同創業者として独立。BtoBマーケティングを中心とした戦略および戦術支援事業に従事している。詳しくはこちら

コールセンターにおけるクレーム応対が離職率増加に繋がる“本当”の理由

━━━クレーム応対におけるミスや失敗が、オペレーターのモチベーションにどのような影響を与えるかについて、どのようなお考えやご経験がありますか?

クレーム応対におけるミスがどのような内容かにもよりますが、そもそもクレーム応対自体が、オペレーターの気持ちに大きな影響を与えるものだと思います。

よほどクレーム応対が得意な方や、まったく苦にしないタイプでない限り、ネガティブな言葉を直接浴びるという経験は、誰にとっても心地よいものではありません。そのため、少なからず気持ちが落ち込んだり、精神的に消耗したりすることは十分にあり得ます。

━━━現場でクレーム対応中・対応後のオペレーターの様子を見て、「これはフォローが必要だな」と気づけるものなのでしょうか?

はい、気付けます。

たとえば、明らかに長時間通話をしているオペレーターや、ずっと謝り続けているオペレーターなどは、外から見ていても「今かなり大変そうだな」というのは伝わってきます。

━━━コールセンターの現場において、クレーム応対が原因で離職してしまうケースは多いのでしょうか?

よくあることだと思います。各種調査でも、離職理由の一つとして「クレーム対応」が挙げられるケースは多いようです。

クレームそのものが原因になることもありますが、実際には「クレーム対応をしている中で、周囲のサポートがなかった」「助けを求めたのに対応してもらえなかった」といった“環境”や“サポートの不在”が離職の引き金になっていることも多いです。

安心して働けない職場では、どうしても人は定着しません。クレームをゼロにすることはできませんが、大事なのは「クレームが発生したときに、どうサポートするか」という組織の姿勢や体制のあり方です。

管理者はサポートしたくない…わけではない。

━━━「どうサポートするか」ですが、そもそも、オペレーターのクレーム応対におけるサポート体制が整っていない現場は、どのような背景があり、整っていないのでしょうか?

背景はいくつか考えられますが、たとえば「管理者の数が足りていない」というのは大きな要因の一つです。

管理者としては本来、手厚くサポートしたいという気持ちがあっても、業務量が多かったり、ひとりが担当するオペレーターの数が多すぎたりといった理由で、一人ひとりに対して十分なフォローが行き届かないという現実があります。

そういった環境が、結果としてサポートの不備に繋がってしまっているケースはあると思います。

━━━つい「なんでフォローしてくれないんだ」と思ってしまいがちですが、前提として管理者も「本当はフォローしたい」と思っているわけですよね。しかしながら、現実的には手が回らない状況が多い。以前、SVさんについて伺った際、「新しいSVが一人増えるだけでもインパクトが大きい」とおっしゃっていたのは、まさにこういう現場に繋がってくるということですね。

そうですね。管理者の人数がしっかり確保できれば、それだけオペレーター一人ひとりへのサポートも手厚くなりますし、現場の安定感も増すと思います。

簡単な話ではないにせよ、やはりコールセンターとして管理者人材の充足を推進するような人材育成の仕組みは重要だと思います。

━━━OJTの2ヶ月が終わり、一連の研修プロセスを経て仮にSVが育成されたとします。ただ、SVになったことがゴールではなく、むしろそこがスタートです。  そこで質問ですが、これまでの研修や現場を見てきた中で、SV研修を通じ、実際に現場のオペレーションや応対品質が向上した事例について、具体的にどのような変化や成果が見られたか、教えていただけますか?  

SVが新たに生まれることで生じる変化は、現場ごとにさまざまですが、例えば単純にスーパーバイザーが1人増えることで、管理の目が行き届く範囲が広がるという効果があります。

これまで手が届かなかった部分の管理が可能になる、という変化が起こることがありますね。  

━━━確かに「スーパーバイザーが1人増えた」は字面だけではインパクトが弱いかもしれませんが、実際にはかなり大きな効果ですよね。  

特に「もう1人SVがいれば、もっとこういうことができるのに」といった課題に直面しているコールセンターにとっては、SVの増員によって解決できる範囲が広がるというケースが多いです。  

引用元:スーパーバイザー(SV)の研修後、現場で活かす術と起きやすい問題とは?

離職率低下だけでなく、現場で重要なクレーム応対の仕組みとは?

━━━離職率を下げるためだけではなく、クレーム応対に関する現場のフォローアップや仕組みづくりにおいて、具体的にどういったことが重要なのでしょうか?

いろいろありますが、たとえばオペレーターに対しては、クレーム応対に関する知識やスキルを学ぶ機会、つまり研修などを設けることが一つの選択肢となります。

そして管理者やスーパーバイザーに対しても、クレーム発生時の対応方法や、現場をどうサポートするかといった意識づけ・スキル向上の研修は欠かせません。

ただ、人数が足りなくてサポートできないという状況はあるとしても、中には「クレームのエスカレーションは面倒だから受けたくない」という気持ちから、クレーム発生時に見て見ぬふりをしてしまうSVがいるようなケースもあり、それは非常に大きな問題です。そうした管理者については、マインド醸成なども必要になってきます。

さらに、そもそもクレームを減らすための全社的な取り組みも重要です。

たとえば、お客様からのご指摘内容を分析して、よくあるクレームの原因が「WEBサイトの表記がわかりにくい」のであれば、その表現を見直すなど、予防的な改善を行う必要があります。

━━━やはり、「必殺技」のような解決策があるわけではなくて、目の前のクレームをどうにかするのはもちろん大事なんですが、そもそも起きないようにする、SVがしっかりフォローできるようにする、マインドの研修もする、対応の技法も教える、そしてWEBの表記も見直す…全部がつながっているんですね。

本当にその通りで、クレーム応対は現場だけの話ではなく、企業全体で取り組むべきテーマかなと思います。短期的な応急処置と、長期的な構造改革の両方を組み合わせて、継続的に改善していくことが大切だと思います。

━━━ちなみに、クレーム応対における考え方やスキルは、オペレーターやセンター長といったポジションごとに異なるのでしょうか?

ポジションによって求められるスキルには違いがあると思います。
たとえば、管理職やセンター長といった上位の職位になると、より複雑で難易度の高いクレーム対応を求められるケースが増えるため、より高度で柔軟な対応力が求められるのは事実です。

一方で、基本となる考え方はどの職位であっても変わりません。

お客様にしっかり向き合い、丁寧に話を聞く、ご要望を正確に把握する。そして、自社の提供した商品やサービスとお客様の期待とのギャップを正しく理解する。こうしたベースとなる姿勢は、どの職位においても変わらず重要です。

━━━やはり「話を聞く」というのはすべての基盤ですね。もちろんポジションごとに前提知識の差や技法の違いはあるかもしれませんが、何にせよ「聞く」が中心にある。

そうですね、どんなクレーム対応であっても、まず「きちんと聞く」ことがベースになります。それがなければ適切な対応はできないと思います。

━━━最後に、ここまでさまざまなお話を伺ってきましたが、全体を通してクレーム応対をキッカケにした離職率を抑えるために重要なこととは何でしょうか?

クレームが原因での離職を防ぐという観点で言えば、オペレーターに対して「きちんとサポートするから安心していいよ」というメッセージを日頃から発信するとともに、実際にそのようなフォローができる体制を用意しておくことが大切です。

オペレーターが「何かあっても、頼れる人がいる」「ちゃんと見てもらえている」という安心感を持てれば、精神的な負担は大きく軽減されます。その安心感があることが、離職を防ぐうえで非常に大きな効果を持つと感じます。

━━━「安心感の醸成」が、制度や仕組みとしても、感情としても整っていることが重要なんですね。そのための研修やサポートがWOWOWコミュニケーションズではご用意されている、という理解でいいでしょうか?

はい。私たちが提供している研修では、クレーム応対の基本的な知識や対応の仕方をお伝えしています。そういった研修も、仕組みのひとつとして現場の支えになると思います。

結局、クレームはサービスのどこかに「不満」があるからこそ発生します。その“何か”を正確に把握するためには、まずお話をしっかり聞くこと、そして電話の後にはその声を改善に活かす。

この一連の流れ、いわばPDCAサイクルを回していくことが、サービス全体の質を高めていくために必要不可欠です。

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この記事を書いた人

猪越 みなみ

2023年WOWOWコミュニケーションズ入社。 過去カスタマーサポート、BPO業務のソリューションセールスに従事。 現在は、営業の経験を活かし、BtoBマーケティング領域の営業企画を担当。

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